英語史ブログにはまっている

 

 慶應大学文学部の教授で、英語研究者である、堀田隆一さんというかたが運営している「Hellog~英語史ブログ」というサイトが面白すぎて夢中で読んでいる。

 

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 ブログの見た目はこのような感じ。本人の業績や著書をまとめたり、受け持っている授業の付録を集積したり、それに加えてちょっとした自己紹介や身辺雑記、自らの専門分野にまつわる書き物などをWeb上にひとまとめで公開している大学の先生サイトはけっこうあるという印象があるが、ここまでやりきっている(thorough)なサイトはそうないのではないでしょうか。

 

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 このブログのthoroughさを示す驚異的なコンテンツがこちら。2009年5月1日から(おそらく)毎日更新されている莫大な量の英語史コラムである。英語史界のヒカキンかよ。僕は読み切れない量の文章に性的に興奮してしまうタイプの人間なので、はじめてここに行き当たったときはほんとうにうれしかった。

 

 タームが立ち並び、読むのをためらってしまうほど長い英語論文の引用がクライマックスに鎮座しているハードコアな英語史コラムもあれば、英語の基本的な疑問にわかりやすく答えるキャッチ―なもの、「言語が変化する」とはどのようなことか、といった、通常のアカデミックな研究にはなりにくそうだが興味深くはある深遠なテーマに触れるものもあって、それぞれの特徴がそれぞれに面白い。

 

 (本当は「現代英語の綴字<e>の役割」と書かれているのだけど、<e>の部分がタグとみなされて脱落している)こちらの回では、現代英語のeという文字には、イー、エーとか言った音をあらわす以外にも合計10の役割がある、といった内容が紹介されている。

 いわゆる「マジックe」というのがそのひとつなのだけど、マジックeというトピックに関しては「#1289. 2012-11-06 (1): #1289. magic <e>」「#2377. 2015-10-30 (1): #2377. 先行する長母音を表わす <e> の先駆け (1)」などを例とする無数の記事で、さらうすこしずつ内容を変えながらなんども繰り返し語られている。

 

 熟達した専門知というのは切れ目なく織り込まれた布のような連続体で、ある話題について語ろうとするとそれに関連する無数のことについて語らないといけなくなる。なににフォーカスするのか、それにどのように光を当て、べつのなにをとりあえず言わないでおくのか。その裁ちばさみの使いかたがとても上手で、それがこの約4000記事あるアーカイブのひとつひとつを、良質な学術的読み物にしている。

 

同じ究極の語根に遡るとはいえ,plague では to strike の能動的で攻撃的な含意がいまだ感じられるのに対し,plankton では to wander の中動・受動的なフワフワ感が感じられ平和である.先日,水族館で大小様々なプランクトンの漂う姿を眺めて癒やされたので,こんな記事を書いてみました・・・.

 今日読んだなかで好きだった回はこちら。かわいい。

 

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 トップページには日替わりコーナーもあるので、毎日訪れても困らない。おすすめのサイトです。