サウジアラビア・スコア

 

 サッカーファン界隈、とくに国内サッカーファン界隈*1でよく使われるスラングに、「サウジスコア」というものがある。日韓ワールドカップのときにサウジアラビアがドイツに8-0で敗北したことに由来する故事成語である。*2

 今回、僕の応援している北海道コンサドーレ札幌清水エスパルス相手にサウジスコアを達成した。

 

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 サッカーの試合で(マイナーな大会などで、出場チームに大きな戦力差がある場合を除いて)8点が入ることは基本的にない。僕も目撃したのは初めてである。

 ただ、試合を見ていて、8-0になるのにふさわしいような特別な理由があったような気はしない。札幌が特別よかったわけでもなく、また清水が特別に悪かったわけではなかった。両チームは違ったシステムを採用していて、そのかみ合わせの違いによって構造上有利にプレーできる地点がおたがいに平等にあった。清水の場合はヘナトアウグストがアンカー気味にプレーした時の中盤の底と、サイドバックが攻撃参加した時のサイド。札幌の場合は清水が中央を固めたときのアウトサイドと、清水が外をケアした時の中央。これをうまく使えたのが札幌で、あまりうまく使えなかったのが清水だったような気がする。

 ほんのすこしの差が、90分の中でなぜか増幅されてしまって、ぽんぽんっと点が決まってしまう。そういうことがサッカーにはごくまれに起こる。一度くるってしまった集団は、狂ってしまっていると個人個人が気づいていてもなかなか元には戻らない。この試合で言うと4点目と5点目のところがそれで、そのあと清水の選手はちょっと気持ちが切れてしまったように思う。大量得点(失点)がある試合には、そういうちょっとした切なさがある。

 

「清水は素晴らしいチーム。今日は(札幌にとって)すべてがうまくいって、清水はすべてがうまくいかなかった。これがサッカーだ」

  8-0。気持ちいいことは気持ちいいんだけど、試合終了後のペトロヴィッチ監督のインタビューのこの言葉がすべてだと思う。

 

 前回対戦時の札幌5-2清水とあわせて、これで今年リーグ戦の清水相手だけで13点取ったことになる。2012年、ガンバ大阪だけに11点取られた怨念をこれでちょっとだけ晴らせたのはうれしい。

 

 ただ、理由のない大量点差試合は負けたほうというよりも勝ったほうの調子を狂わせることも多いということもあり……、次の首位FC東京線は後半戦最大のターニングポイントになるかもしれない。

*1:じつはサッカーファンにはヨーロッパのサッカーしかみない人たちがけっこういて、主に地元のクラブを応援しているJリーグファン層とは緩やかにセグメント化されていたりする。

*2:ほかにも5-0を夢のスコア、10-0をフェイエスコアと言ったりする。