カタールで働いている友達と電話で話していたとき、友達が「いまサウジアラビアとカタールが国交断絶してるから大変なんだよね」と言った。サウジアラビアは地域大国なので大変なのはその通りだとは思ったが、カタールにもべつの事情があった。
カタールが国境を接している国はたったひとつ、サウジアラビアしかない。ひとりしかいない隣人と絶交したようなものである。サウジアラビアにとってはカタールはワンオブゼムだが、カタールにとってはサウジアラビアひとりしかいない。そういう関係だったのだ。
完全に孤立した日本のような国で暮らしているとわざわざ注目することはないが、隣人がひとりしかいない国というのもそれはそれで大変なはずだと思う。それで興味が湧いて、お隣さんがひとりしかいない国は世界中にいくつあるのか調べてみることにした。
すぐ地図を見てもしょうがないので、なんとなくあたりをつけていく。カタールのように半島に位置していて、その付け根を別の国が覆っている、半島押し込まれ型の半ぼっち国がいくつかあるはずである。ぱっと思いつくのは韓国、デンマーク、そしてポルトガル。それぞれ、北朝鮮、ドイツ、スペインとのみ国境を接している。
ただ、デンマークには問題があって、実は橋でスウェーデンと繋がっている。この場合は2か国と接しているというのだろうか?
橋を含めるとするならば、最初の図にも写りこんでいるバーレーンは、島国ではあるが橋でサウジアラビアと繋がっている。シンガポールも同様で、島国であるが、マレーシアと橋で繋がっている。
まあ橋問題はおいておいて、ぶれることのない、文句なしで一か国としか接していない国を探し続けることにしたい。文句なしで一か国としか接していないと言えるのは、ひとつの国に周りを取り囲まれているような国である。このタイプの国は目立つので、地図を見ないでもいくつか挙げられるひとも多いのではないか。バチカン市国(イタリア)、サンマリノ(イタリア)、モナコ(フランス)と言ったヨーロッパのミニ国家と、アフリカにあるレソト(南アフリカ共和国)がそれに該当する。()のなかは接している国。
もっと別のパターンを考えてみよう。日本は島国で接している国は0だが、もし西日本と東日本が分離して独立したら、両方とも条件を満たす国になる。ひとつの島をふたりで分け合っているような仲良し国家(というのは嘘で仲が良くない場合のほうが多い)を探してみる。
ドミニカ共和国とハイチは美しい例。ほかにもブルネイ、パプアニューギニア、東ティモールが島わけあいパターンで一か国とのみ接しているが、相手はすべてインドネシアであり、インドネシアのほうはもちろんたくさんの国と接している。ほかにも友達がたくさんいるのに、ほかに友達がいないようなひとともたくさんつき合っている、インドネシアは分け隔てなく誰にでも優しいクラスメイトのような存在なのかもしれない。
有名どころではこういう国もある。アイルランドとイギリスがどちらも条件を満たしていると錯覚しそうになるが、イギリスには帝国時代の負の遺産があり、
ジブラルタルという飛び地でスペインと接している。
残りすくなくなってきた。大きすぎて逆に忘れそうになるがカナダもアメリカとしか接していない。これで橋でつながっているときもカウントするなら15か国、橋は除くと14か国が見つかったことになる。
答えから言ってしまうと、一か国としか国境を接していないような国はのこり二か国ある。この二か国は非常に難しいが、見つけることができた場合の喜びも大きいだろう。その喜びを取り上げるわけにはいかないので、ぜひ、自分で探してみてください。