ロベルト・シューマン 交響曲第4番

 

 僕はクラシック音楽の良いリスナーではなく、楽しむ作品のジャンルや時代・地域がけっこう限られている。ピアノ曲とかデュオ・トリオなどの室内楽はほとんど聞いたことがなく、かわりに交響曲とか協奏曲とかの、規模の大きい管弦楽をメインで聞いている。だって、どうせ聞くなら一度に鳴っている音の数が多い曲を聞いたほうがなんだか得した気分になりませんか? コスパがいいし。

 

 好きなクラシックの作曲家はメシアンラフマニノフ、ニールセン、カリンニコフなどであり、彼らの曲を集中的に聞くことはあるものの、なかなかいろいろな人の作品を一通り聞く、という段階には至れていない。実際には有名な作曲家についてはひとりにつきひと作品くらいはいちおう通しで聞いてはいるものの、そういう博物学的なモチベーションだと途中で集中が切れてしまいがちで、なかなか「好きだ!」という心の段階まではいかない。

 

 最初に聞いたときから寝ずにちゃんと聞けて、しかも思い出したときには聞き返すくらいには良好な関係を築けた、という曲はそれほど多くない。

 

 多くないうちのひとつが、ロベルト・シューマン交響曲第4番である。クラシック音楽界隈ではあまり(有名な作曲家はとくに)ファーストネームをつけて呼ばないという流儀があるが、シューマンにはウィリアム・シューマンというアメリカ人のそこそこ有名な同姓の作曲家がいる(スペルはすこし違うが)ので、どうしてるんだろう? シューマンと言えばロベルトでしょ、ってなったらウィリアムさんのほうにちょっと失礼よね。

 

 この交響曲第4番には曲中でいくつかのフレーズが、楽章をまたいでいろいろなところで反復、展開、変形して使われているという特徴があって、通しで聞いていると「あ、これあのとき聞いたあれじゃん!」となってとてもうれしくなる。一度聞いたフレーズがもういちど、形を変えて現れてくるというのは音楽の原初的な快楽ですね。

 

 モチーフがどのように使い回されているかについてはニコニコ動画に非常に詳しい解説があった。すごい。

 

 そしてそのひとつひとつのフレーズがもうめっちゃ僕は大好きなのである。トゥッティ(? かどうかは僕の愚耳にはわからないけど)ぽい最初の一音からすぐに始まる、そろりそろりと歩くような、ゆったりとした、けどくすんでいて緊張感のある第一楽章序奏のモチーフが大好きだし、そのあとの激しい仮面舞踏会みたいな第一楽章のメインテーマは本当にまじでかっこいい。

 

 第二楽章の牧歌的なパートからすぐに始まる、激しい、第一楽章のメインテーマを思い起こさせもするけれど、けどきっぱりとしたベースラインとの絡みによって、もっとゆったりとした、けど切れのあるダンスを思い起こさせるような第三楽章のメインテーマがいちばん好き。そのアンサーのような艶やかな第三楽章のサブテーマも素敵。

 第四楽章は混沌としていて、いまいちつかみ切れていないのだけど、でもそれはそれで楽しい。

 

 知っている交響曲のなかでも4番目ぐらいに好きな曲です。世界中におすすめ。