僕はツイッターで面白い小ボケをするのが好きなひとたちを大量にフォローしているため、タイムラインを見ていると面白い大喜利がいっぱい流れてくる。ふふっと笑っていいねを押しちゃうんだけど、それと同時にあるべつの激しい感情も湧いてくる。「俺もウケるボケを言いたい…! コイツは確かに面白いことを言った。だけど、俺はさらに高みを目指したい」
そういう対抗心が湧いて素直に楽しむことはできない、ということをお笑い好きの友達に話したことがある。共感を期待していたのだけれど、その友達は遠い眼をして「男子ってそういう"バトル"してるところあるよね」と突き放され、深入りすることはなくその話題は終わった。「敬して遠ざける」の見本のような美しい対応だったのでちょっと感服してしまった。
とはいえ、面白いことは、言おうと思ったら言えるようなものではない。センスや頭の回転も大事だけど、それ以上に大事なのは思いついたボケが本当に面白いのか、言うまえに自分で吟味することだと思う。面白いかどうかを判断するのは意外と難しくて、深みにはまったら抜け出せなくなる。その深淵に魅入られて力尽きたツイッター大喜利アカウントの屍はいたるところに転がっている。
深淵は遠くもなく近くもなく、ちょうどいい距離から観察するのがいちばんよい。このちょうどいい距離のことを念頭に置きながら、自分の大喜利を振り返って分析、採点する。
帰ったらメルカリで売 pic.twitter.com/4O5tul5DWJ
— soudai (@kageboushi99m2) April 8, 2018
いきなり面白くてワロタ。いやこれは文句なく面白いでしょ。自分で見て笑ってしまった。「メルカリ」というすでに面白いワードを持ってきて、しかも浦島太郎のお話としっかり調和しているところが良い。言葉の面白さとお題とのマッチ、それに加えて、「いや、せっかくもらったのを売るのかよ!」→「でも、それはそれで図らずも本人にとっては良い結果をもたらす」という2つのポイントで「変さ」を作り出すことに成功している。
ひとつの大喜利に複数のポイントを作るのはなかなか難しいのだけど、決まったら抜群に面白くなる。100点満点で100点。大喜利の教科書に載せたい。
なんちゃって、冗談よ。本当はこれは丸めて潰したカブトガニ。 pic.twitter.com/2nuDIQLrkF
— soudai (@kageboushi99m2) June 1, 2018
これはあまり面白くない。カブトガニも天然記念物である、というところが笑いどころなのだと思うけど、ちょっと説明的すぎる。この出来ではカブトガニとしずちゃんがかわいそうだ。25点。いま添削するとすれば、「なんちゃって、冗談よ」を削るかな。しずかちゃんが完全に怖い人になってしまうけれど。
おなか いっぱい pic.twitter.com/eEoYw58QAs
— soudai (@kageboushi99m2) March 25, 2018
こういうのが僕の芸風だと勝手に思っている。大喜利はやっぱり、ナンセンスとバイオレンスをふんだんに含む激しいボケのほうが面白くなりやすく、見ているぶんにはそういう回答のほうが好きだったりもするんだけど、自分でやるのはそこまで好きじゃない。(さっきのカブトガニとしずちゃんの回答は、そういう点からも不満が残っている)
これのように、ちょっと気の抜けた害のない感じを出していく、というのが僕の当座の目標になっている。その目標を達成はしているが、ボケとしてはやはり力不足という感じがぬぐえない。また、気が抜けているのはいいんだけど、ちょっと抜け過ぎで、逆に狙いすぎで鼻につくような感じもする。35点くらいか。
ファイヤー! pic.twitter.com/Q2gvqkzOa8
— soudai (@kageboushi99m2) March 22, 2018
こういうのわりと僕は好きで、見返しても笑ってしまうんですけど、さすがに他人を笑わせるのはこれでは難しい。工夫もなにひとつ見られない。5点くらいかなと思うけど自分は笑っているので、ちょっと足して15点にする。
成田空港の真ん中にあるんです pic.twitter.com/gWf9Qmeo6w
— soudai (@kageboushi99m2) March 19, 2018
これはダメだ。面白くないどころか見返してちょっと恥ずかしい出来。0点。成田空港のなかにある家はこのお題の状況となにも関係ない。
さめてきたなあ、酔いが。 pic.twitter.com/BVnL38v8FW
— soudai (@kageboushi99m2) March 12, 2018
これはたぶん面白いと思う。(「さ」を最初にしなきゃいけない縛りがあったので当然だけど)無理やりいじってなった変な語順がちょっとおもしろいというのと、あとはなによりこの「言ってる」感。こういう、声を当てる系のボケは、その登場人物の表情や身振りから、「本当に言ってるぜ」というライブ感が出せてしまえばもうほかの要素はなにも関係なくそれだけで面白くなってしまうというところがある。
しかし回答の発想自体は陳腐で、うまく料理しているというよりは素材をそのまま焼いて出しただけのように見える。個人的には、やっぱりもうすこしひねった回答のほうが好きだ。65点。