A MAP OF MY DREAMS~キャシー・アッカー『血みどろ臓物ハイスクール』~

 

助けて
もう自分じゃない

学校の拘束をよそに、企みは必ず実行に移した。いい気分だった。飲酒、ドラッグ、ファック。とことん互いを性的に痛めつけ合った。

 

血みどろ臓物ハイスクール (河出文庫)

血みどろ臓物ハイスクール (河出文庫)

 

 キャシー・アッカーさんの『血みどろ臓物ハイスクール』という本を読んだ。ある友人と会ったときにもらった本なのだけど、読んでいて、個人的に持っていたその友人に対する印象には合致しなかったのでびっくりした。でも、本って、どんな人もどんなに違った印象のものも読めるのが不思議ですよね。

 

あんたマジでキチガイか、ないのですかあなたあたしの愛は意味も何のにとって?

思うのですがあたしはよりも氷のように冷たいもっと冷感症だとイリュリア?

 非常に前衛的に書かれた小説で、話の筋のようなものはうっすらとないこともないのだけれど、基本的には小説の各部分が小説のそのほかの部分とは内容・形式的なつながりの薄い、とてもランダムな作りになっている。

 

(1)肉体的隷属――あたしは食べて屋根の下に住まなければならないので金が要る。また、あたしの体はセックスと贅沢な食べ物が好きなので、これらのためなら何でもする。

 表現はかなり猥雑、……性的なことを表す卑語が印刷されていないページを探すのに苦労するくらいであるが、同時に、ナサニエル・ホーソーンルイ=フェルディナン・セリーヌジャン・ジュネといった文学作品への参照も見られたりするし、投げつけるようにくりだされる文章は、作者の内側に由来するなにかを表現したいという情熱を感じさせる。

 そういう点では、ビート・ジェネレーションの作家たちや、日本人でいうと高橋源一郎、あとはレイナルド・アレナスなどに読んだ感じは近いのかもしれない。これらの作家のルーツに当たるモダニズムの作家の影響下にもたぶんあるのだろうけれど、そのあたりをそんなに読んだことがないのであまりよくわからない。

 

すべての苦痛のうめき声は抵抗の怒号

すべての苦痛のうめき声はロマンスの怒号

 つづられているテーマのひとつに「抵抗」があると思うのだけど、その抵抗の相手はこの世のありかた、くらいの感じに漠然としている。それに加えて、抵抗の主体である自分自身の確固としている度がかなり低くて、むしろ自分の個人的な体の欲求とかがその抵抗の敵にもなったりする。そういう配合の仕方がとても特徴的だった。