完全制覇者はいまだ4人(のべ6回)のみ

 

 12月29日に森本裕介さんが2度目の完全制覇を達成したので、まえに書いたことがもう時代遅れになってしまった。

 完全制覇者が出るたびに、SASUKEはステージに大幅なリニューアルが施され、難易度も上昇する慣例になっている。来年からはしばらくのあいだ、FINALステージ出場者は見ることができなくなるかもしれない。

 

 史上二番目に完全制覇を達成したのが長野誠さんという、宮崎県延岡市*1出身の猟師さんである。この長野誠さんが、SASUKEのステージ上で残した言葉がとてもかっこよく、同時に文学を感じたので、ここに書き残しておきたい。

 

 2001年の第7回大会に29歳で初出場。当初は思うような成績を残せず苦しむものの、しだいに大会屈指の実力者として評価されるようになっていく。第11回大会でははじめてFINALステージへの挑戦権を手にするが、わずかにゴールのボタンには手が届かない。

 

第12回は初のゼッケン100番となった。ゼッケン95番から5人連続1stクリアという状況の中、1stを15.82秒残しの最速タイムで突破。2ndも14.6秒残しの最速で突破し、1st、2nd同時最速タイムを達成。3rdも突破し、再びFINALに進出。

タイムアップギリギリの所でボタンを押したものの、0秒11の差で完全制覇を逃す。後のインタビューで長野は、ボタンを押す直前に風でロープが揺られたことが原因だと語っている。

タイムアップギリギリであったためスタート地点に戻されることはなく、この時に初めてファイナルの頂上へ登った。放送ではエンディング直前、カメラスタッフから「下(ファイナル頂上からのみ眺められる景色)、見ますか?」と質問され、長野は「また、いつか来た時に」と語り、上からの景色を見下ろすことなく、その場を後にした。

長野誠 - Wikipedia

 

 2006年の第17回大会で長野誠さんは完全制覇を果たす。そのときのチャレンジの様子とそのあとのインタビューがTBS公式から配信*2されており、個人的に好きな、文学的なくだりもそのまま見ることができる。

 

 SASUKEのステージ頂上に設けられた、人類のなかでも、本当に限られた人しか行けない場所。「そこには、なにがあるんですか?」と実況に聞かれ、長野誠はこう答える。「ここには、本当はなにもないです」

 

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 そこでちょっとはっとした。やっぱりそうなんですよね。ばかげた、でも激しい努力をして、それでもたどり着きたいと思えるような場所が人生にあるとしたら、それはきっと、なにもない場所でなければならないのでしょう。

*1:旭化成の本拠地でもある工業都市らしい。著名な人物としては、河井案里さんもこの市の出身となっている。

*2:TBS公式にはいくつかの動画配信ブランドがあるようで、このチャンネル「TBS公式 YouTuboo」ではインタビュー部分も公開されているが、より再生回数の多い「TBS Yeahhh! [ヤァー!]」ではインタビュー部分はカットされている。