手負いの、抜け目ない獣~プレミアリーグ第19節トッテナムvsブライトン~

 

 観るがわも大変なほどのペースで試合がある、年末進行のイングリッシュ・プレミアリーグ。僕の応援しているトッテナム・ホットスパーFCは前節チェルシーに惨敗(太陽を90分見つづけてたほうがましだった - タイドプールにとり残されて)したあと、すぐにホームで、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCと戦うことになった。

 

 地理が好きだということを思い出した最近から、サッカーの試合があるたびに相手チームの本拠地の街について調べものをすることにはまっている。

 ブライトン・アンド・ホーヴの中心都市であるブライトンはロンドンから電車で50分ほどで行けるビーチ・リゾートの都市らしい。逗子ぐらいの感覚だろうか。セクシュアル・マイノリティのカルチャーがすごいらしく、19世紀の終わりぐらいという非常に早い時期から「ゲイの首都」と呼ばれていたらしい。

 

 これまで攻撃時にオーリエをサイドの高い位置へ、フェルトンゲンを3バックの左の位置へ移動させる「442⇔325可変システム」を主に用いていたが、この試合では左ウィングの位置に入ったセセニョンが守備時に相手のWBにあわせて下がり、5バックを構成する、数字で表すと3421という布陣を使って試合に入った。

 だがまあこれがはまらない。3トップのケイン、アリ、ルーカス・モウラカウンターアタックを意識するので守備時にはあまり深くまでは戻らない。では、スパーズの1列目を突破したあと、サイドで持たれた場合はだれがチェックに行くのか? というところで迷いが生じ、相手にボールをいいように回される時間が続いた。

 

 守りかたなんてじゃんけんみたいなもので、絶対の正解はないのですが、絶対の不正解があるとしたら、どうしていいかわからないので雰囲気でやることでしょう。するとプレーが遅れ、本来負けなくていい相手に1vs1で負ける。前半は先制されて、ハーフタイムを迎えた。

 

 後半には修正が入る。具体的にはセセニョンの守備位置が高くなった。これでボケていた1列目の後ろでボールを持つ相手にプレッシャーをかける役目の人が定まる。このことによって、相手のWBに対角のフィードが出たの際の守備に問題を抱えることになるが、これはおそらく織り込み済みだったのでしょう。

 WBからゴール前の形をなんどか作られるが、ダビンソン・サンチェスやフェルトンゲンが頑張ってゴールは割らせなかった。

 

 これで、トッテナムは前を向いた形でボールを回収するのが難しくなるので、必然的に攻撃に切り替わったときの一発目の選択が前へのパスになることがすくなくなり、トッテナムはボールを保持して攻撃するようになる。それに合わせて、それまでは攻撃時3バックを形成していたフェルトンゲンを、ふつうのサイドバックとして運用させて、ボールの逃げ場にする。ボールを持った状態で仕事ができるエリクセンを投入する。

 

 モウリーニョ監督がこれまでやっていたのとはぜんぜん違う戦術に試合中突然変わってしまったが、選手たちにとってはこちらのほうがやり慣れた形である。アイディアあふれるプレーが飛び出し、勝ち越しに成功。

 ブライトンは再逆転のために布陣を4バックに変更するが、両SBの仕事はWBとしてのものそのまま据え置きになっている。このままだとカウンター時、中央の一番やばいところが手薄になるが、肉を切らせて…といった気持だったのでしょう。一方スパーズはダイアー投入あたりから守備陣形を、いわゆる「コンパクトな442」に変えて、外に開いている相手の「SBの顔をしたWB」へのマークは捨てる。

 

 最終盤は、「あまりにブライトンの被カウンター守備が手薄すぎるのでスパーズがカウンターしてしまう」→「でも疲労が蓄積しているので攻撃終了後戻れない」→「コンパクトな4-4ブロックすら組めない」となって、ヘロヘロ~という感じだったが、失点までには至らず、なんとか2-1で試合を終わらせた。

 

 現状のスパーズが、傷をいやしている途中の手負いのチームであることは間違いないでしょう。ただ、手駒は揃っていて、それを抜け目なく使って勝てる相手には勝って時間を稼ぐ、ということはぎりぎりできていると思う。

 連戦はもうすこし続きますが、そのあと、シーズン終盤にはどういうチームになっているか。とても楽しみですね。