蝶のことは蝶々博士に蛾のことも蝶々博士にあかるい国だ
— は湯 (@hajime_yu11) 2024年2月22日
花を愛ずるひとは去りゆき花泥棒だけがしずかに春を想った
アパートはすべてのひとを吐き終えていずれは還る龍のすがたへ#tanka #短詩の風 pic.twitter.com/QyOIBlHczx
Twitterでなんとなく短歌を見ていたのですが、こちらの「は湯」*1さんというかたのがとてもよくてしばらく読んでいた。
流し見していたタイムラインで最初に目に留まったのが「蝶のことは~」の歌。で、タイムラインを止めて、蝶々博士という謎の存在を登場させてしかも蛾も兼ねてるのね、というユーモア、その中に、でも蛾は世間のイメージ通り兼ねられちゃう日陰者なんだな、そしてそんな日陰者に構うことなく国は明るいんだねえ…、となるペシミスティックなテイストが、コンパクトに一首に収まっていていい歌だなと思った。
3首目のアパートの歌も突然龍が出てきてオチになるのだが、これも「吐く」とか「還る」とかのこまかい言葉遣いだったり、あとそもそもアパートってそんなに尊敬されてないけど、人間のスケールから考えたらとてもでかい構造物だよな…というところに気づいて詩の材料にする感覚などがあって、突然の展開に意外な説得力を持たせている。すごいな~。
ちょっとアカウントからたどってみると、「湯島はじめ」さんという名前で短歌を発表しているかたで、ネット上でもいくつか作品が読めることがわかったので読んでいた。以下その中から好きな歌です。
こちらはnoteのエッセイで、短歌作品をタイトルにしている。「雨後の街」を「出てゆきたい人は出てゆく」ととらえるところ、雨後の街の暗さに対比させて「花梨飴」の色に着目したところなどが決めどころだと思うのだが、抜群に決まっていて美しい…と思った。こういう歌が世の中にもっと増えてほしいな。
窓のむこうに見えた観覧車のことはいま言わなければもう靄のなか
こちらはカクヨムで公開されていた連作から一首。これも天才としか言いようがないですよね。
全体的にあまり個別性がなく、ファンシーなモチーフを使っているので絵本の世界のような優しさを感じる言葉遣いなのだが、その中にちょっとだけ陰をつけるという作風があるようなきがして、非常に個人的に好みです。
連作の中にはアンサーソングみたいな一首もあってその呼応も良かった。重要な一首っぽいですね。
やっぱりネットで短歌は、日々見るべきだな……。