個人的キャラ人気投票ランキング1位は「老人」~アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』~

 

 アーネスト・ヘミングウェイさんというひとが書いた『老人と海』という小説を読んでいた。とても面白かったので個人的好きだった人気投票ランキングを発表したい。

 1位、……老人! 2位、……魚! 3位、……はネタバレになるので伏せで。4位は少年、5位は小鳥、というところです。*1

 

 小鳥が北から舟をめがけて飛んできた。海面を低く飛ぶ。へばっているのだろう。
 たどり着いて船尾にとまった。それから老人の頭をくるりと越えて、つかまりやすいロープに行った。「おまえ、いくつだ」老人は鳥に年を聞いた。「旅は初めてか?」

 しかしでも、これ老人以外を1位にする人はいるんでしょうか? それくらいとにかく! 老人のキャラクター性が光る小説だった。

 

 老人のいちばんのキャラ特徴といえばもう「老いている」という一点なのですが、それが非常に真に迫る形で書かれている。自分の肉体の衰えをある程度客観視しているんだけど、気力は満ちていて、けれど体がついていかない一瞬も……。そういうことがひとつひとつ念を込めて描写されていて、読んでいてとてもリアルです。

 少年と絡むシーンは、少年がまじで老人にやさしくてだからこそ老人がめちゃくちゃ衰えているということがわかって切ない。優しさの切なさ。

 

 あとアピールしたいのは食事の描写。小屋で少年に「食べなよ」と言われるところから、早朝に飲むまずい「鮫の肝油」のところ、魚との死闘中の腹ごしらえそして港に戻ってくる最後の局面の「食事」まで、「食事」についてのシーンが一そろいあるんだけどどれもいいんですよね。

 もう老い切っているので、老人にとって「食べる」だけでもけっこう大変なことなんですよ。それを事務的に、それで足りるの?みたいな量を腹に突っ込んで、魚との死闘に挑むんですが、それがそれぞれの食事の局面で表情のバリエーション豊かに描かれていて熱い。

 「塩を持ってくればよかったな」と何度も思うところとか、一瞬まぬけだけど、でも食味にたいするないものねだりがまだこの老人にもあるんだ…、というところでちょっと読者としては安心するんですよね。この老人の生命力はまだ尽きていないと。応援したくなっちゃう。

 

 もう人類の公共の財産になっている有名な作品なので、検索したらけっこう簡単にあらすじのネタバレを踏むと思う。……ただ、もしこの小説を読むつもりがあって、オチを知らないのであれば、知らないまま読んだほうがいいと思う。

 文学作品はあらすじ知ってても面白く読めがちだけど、これは絶対「老人これどうなるん!?」とどきどきしながら読むほうが絶対に面白い。

 

f:id:kageboushi99m2:20220313192947j:plain

 ぜひ、「老人」「海」をTwitterのミュートワードに設定して、『老人と海』を注文してみて下さい。Amazonプライム会員だと、光文社古典新訳文庫のバージョンを0円で読むこともできます。

*1:6位は観光客かな。