小説紹介記事のまとめ

 

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 読んだことはなくても、名前を聞いたことのあるかたも多いのではないか。チャールズ・ディケンズの『二都物語』を読んだのだけど、とても面白くて終盤はずっと泣いていた。

 

 全体的な物語はひとりの人間の半生を描いた固い教養小説の枠組みが使われている。と思いきや、「鼻を見ることで人間のすべてがわかる」と主張する治療院の医師が意味深に出てくるところなど、ポストモダン文学の香りがするエピソードもふんだんにちりばめられている。『黒曜石雲』という謎の本との出会いから始まる導入部分は碩学な作家が書くような「本についての本」って感じで、けどその『黒曜石雲』の内容は、起こりえない不思議な出来事を客観的に描くマジック・リアリズムだ。ダンケアン周辺の街の悲劇をミリアムが語るあたりは、ミニ『見えない都市』といってもいいと思う。

 

 主人公は老化が速く進むという生まれつきの病気*1を抱えていて、生まれてからたった17年しかたっていないのにもかかわらず、若くして17歳で子を設けた両親よりも老いたからだとこころをしている。

*1:早老症。アシュリーという女性を追いかけたドキュメンタリー番組のことを覚えているかたも多いのではないか。

 

罪悪感を持ちながら悪をなすことと、自分が純粋・潔白*2 でいるために人を害することは、どちらがよりましなのか?

*2:どちらもピュリティPurityの訳語となりうる

 

 物語の核心となる部分が読者には伏せられていて、それが明かされたときに気持ちよくなる、というシステムのお話としてとても良くできているし、明かされるまでの待ちの時間は特徴的な文体や世界を見る視点を楽しむことができる。

 

 フィリップ・ロスの小説、『さようなら コロンバス』を読んだ。フィリップ・ロスさんというのは現代アメリカではとても名の知れた、すくなくとも四天王に数え上げられるクラスの作家で、この『さようなら コロンバス』は20代半ばで書いたデビュー作である。日本では1970年代に出たバージョンしか翻訳では入手できないようだが、被言及に恵まれている作品なので、うわさには聞いたことがあるひとは多いだろう。

 

 毎月8日恒例の、アマゾンで1円で買える面白い本の紹介をしていきましょう。今回取り上げるのはジェニファー・ベルさんの書いた『ゴーイング・ダウン』という小説。ニューヨークでちょっと踏み外し気味の生活を送る大学生が、コールガールとして働くお話だ。