DBCピエール『ヴァーノン・ゴッド・リトル 死をめぐる21世紀の喜劇』

 

今日は火曜日で、地獄の回転乾燥機がおれたちの人生を回し始めてからちょうど3週間だ。

 

 どうも~! こんばんは! 毎日深夜1:00におすすめの本を紹介しているこのブログ、658回目の今回は、DBCピエールさんの書いた『ヴァーノン・ゴッド・リトル 死をめぐる21世紀の喜劇』を取り上げていくぅ。

 

俺は独房で坐り、横になり、歩き回り、また坐り、次に法廷に行く日を待ってる。運命を運ぶ時間の流れはすごく遅くなってる。木曜日は水曜日に食らいつき、ジーザスが最後の息をしたのが十日前になり、ナックルズの沈黙だけが残る。

 テキサス州の町マーティリオで、なんらかの事件が起き、主人公であるヴァーノンはどうもその事件の犯人だとみなされているらしい。事件では、ヴァーノンの親友であるジーザスが死んでいて、ヴァーノンは自分が犯人じゃないこと、自分の見た真実を話したいと思うのだけど、なんというか、世間というか、この世界の不条理さに対するあきらめのようなものがあって、結局本当のことを話すかわりに、自分の力で町から逃げ出そうとする。

 ……というお話で、ではこの事件の真相はいったいどうだったのか、ということが明かされる本のラストの部分に物語はクライマックスを迎える。

 

でも一つ学んだことがある。おれの大きな欠点は怖れだ。自分が異常者だとされちまう世界で、おれは成功しようとして十分大声で叫ばなかった。神様のふりをするなんて決まり悪いなどと思いすぎてたのだ。

 物語の核心となる部分が読者には伏せられていて、それが明かされたときに気持ちよくなる、というシステムのお話としてとても良くできているし、明かされるまでの待ちの時間は特徴的な文体や世界を見る視点を楽しむことができる。

 物語の中心にある思想・テーマもまっとうで、作者の変な名前だったり、全体的な雰囲気だったりが醸し出している、ちょっと人を食ったようなイメージとは裏腹に非常にちゃんとしている本である。好みは分かれる作品かもしれないが、とりたてて読むのを躊躇するようなものではない。時間に余裕があるのなら読んで損はない。

 

「服を脱いで。それからここに横になって」
「服を脱ぐんですか?」
「そう――最後の検査だ。私たち精神科医はなによりもまず医師なんだよ。――そこらの心理学者と一緒にしてもらっちゃ困る」