嘘つきには三種類いる

 

 HUNTER×HUNTERのビスケによれば、嘘つきには「意味のある嘘しかつかない」タイプと「意味のない嘘もつく」タイプと2通りがいる。ビスケとキルアは前者、ヒソカは後者らしい。

 

 ……この二種類の嘘つきは、おたがいのことを理解するのがけっこう難しいっぽい、ということに、最近あったいくつかの具体的な経験や会話を通じて思いいたった。「意味のある嘘しかつかない」タイプは、「意味のない嘘もつく」タイプがなんで意味のないタイミングで嘘をつくのかよくわからないし、「意味のない嘘もつく」タイプはなんで意味のある嘘しかつかない」タイプが意味あるタイミングでしか嘘をつかないのか、よくわからないのである。

 

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 そもそも嘘つきどうしというものはけっこうおたがいを察して、うまいこと通じ合えたり付き合えたりするものである。それかそれができているふりをするものである。……なのに、なぜこの2タイプの嘘つきどうしになるとそれが難しくなるのか。

 おもうに、この2タイプでは嘘をつく目的がぜんぜん違うからではないか。

 

 「意味のある嘘しかつかない」タイプが嘘をつくのは、相手に信じてもらうためである。つく嘘は、嘘をついた相手がその嘘を本当のことだと信じることで効果を発揮するタイプの嘘になる。

 相手が信じてくれないと嘘は目的を達成しないので、信頼ポイントは有効に使わないといけない。嘘もちゃんとばれないようにつかないといけない。だからこそ、嘘をつくタイミングは最小限に、効果的に、意味のあるタイミングだけに絞られる。もし嘘がばれそうだったら、信じてもらうためのさらなる嘘をつくことになる。

 

 「意味のない嘘もつく」タイプが嘘をつくのは、自分が本当のことを言ったときにそれを隠すためである。……つまり、相手に「こいつはほんとうのことを言っているのかよくわからない」と思ってもらうために嘘をつく。

 だからつく嘘は、べつにすぐにばれるようなものであってもかまわない。ばれなくてもそれはそれでいい。ただ、相手が自分のことを話し半分でしか受け止めなくなればそれでいいのだ。ほんとうのことを言ったとき、本当のことを言うしかなかったときに「それは嘘だったかもしれない」という疑念が周りの人に残ること、それが達成できればそれまでの意味のない嘘たくさんがようやく報われるのである。

 

 「意味のない嘘もつく」タイプは、「意味のある嘘しかつかない」タイプが普段の生活において置いている信頼ポイントへの高い価値を理解できないし、「意味のある嘘しかつかない」タイプは「意味のない嘘もつく」タイプの意味のない軽い嘘の意図がわからず混乱してしまう。

 

 世の中には、嘘と本当の使い分けに対する考えかたがまったく異なる上記の2タイプの人間がどうやらいる。気づいてしまったらそれを日々人々と話すなかでどこかに感じつつ、人生を過ごしている。