あんまり本質はついていないかもしれない「奈良へ」(大山海)のレビュー

 

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 大山海さんというひとの漫画「奈良へ」を読んでいた。我々の生きている世界についてのオリジナルな認識がオリジナルな手法で描かれていて、とても良い作品だなと思った。

 「良い」という感想はけっこう、どんな段階のものに対しても、「良い」の基準を変えたりずらしたりしつつ言える便利な言葉なのだけど、今回はちょっとひさしぶりにいちばん上の水準で「良い」と思った。

 

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 この作品について鋭い分析をしようと思ったのだが、……ちょっと手に余った。もちろん時間をかければこの作品の本質をあぶりだすすごくいい批評ができるとは思うけど……、ていうか、僕はビジネスマンなので、そんな時間はないんですよね。毎日書いている趣味のこのブログに割ける時間も、あと25分ほどである。

 

 まあ、実際読めば何がどう良い作品なのかは、言葉にするのは難しいにしてもわかりはするはずなので、気になるひとには買って読んでもらうとして、今回の残りはこの「奈良へ」という作品について、あんまり本質はあぶりだせていないけど忙しい日々の合間に書くとしたらこんなもの、という妥協の分析レビュー感想を書いていきたい。「奈良へ」の良いポイントは大きく3点だ。

 

壱、古都「奈良」を舞台にしたお寺巡り連作短編

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 「奈良へ」はまずもって、不思議な磁力を持つ古き都「奈良」を舞台にした連作短編漫画である。奈良の実在するお寺を舞台にしてさまざまなストーリーが繰り広げられる。アクセントとして昔奈良にあった遊園地「ドリームランド」がお寺に混じって取りあげられるなど、搦め手も効いている。

 これらの場所に行ったことがあるひとは、かなり感情移入して読めるはずだ!

 

弐、一癖も二癖もあるキャラクターたちが繰り広げるシュールな群像劇

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 連作短編とは言ったが、それぞれの話に登場する癖のあるキャラクターたちは、他の話にもちょくちょく登場し、作品世界全体として奇妙でシュールで不思議なワールドが生み出されている。

 キャラどうしが繰り広げる、関西弁のすこし間の抜けた掛け合いも魅力的だ。関西人であれば、「わかるわ、このリズム」となるのではないだろうか。

 

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参、トーチwebで最初の6話を試し読み!

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 トーチwebというサイトでは「奈良へ」の最初の5話「西大寺」「東大寺」「法隆寺」「唐招提寺」「飛鳥寺」を試し読みすることができる。また、ついでに、町田康さんという人気文学作家の書いた解説の全文も読める。

 もしここまでのレビューを読んで、気になっている、というひとはまずはここにアクセスしてもいいのではないだろうか。

 

 (ただ、このマンガに関して何らかの感想を抱くために必要な情報は、ここで読める5話だけでは得られない。この5話だけでもなんとなく「ふ~ん、そういう作品ね」とわかっちゃえなくもないのだが、トラップであり、すくなくとも7話「ドリームランド①」までは読まないとこれがどういう作品なのかはわからない。留意されたし)