かっこよ専門用語

 

 僕には勉強が趣味、というところがあるが、勉強していくうちに行き当たった、語の響きや面にかっこよさ、魅力があり、その分野でしか流通していないのが惜しくなるような言葉をコレクションするのがもっと趣味、というところがある。

 

 今日はそのコレクションをいくつか選って*1紹介したい。

 

無窮動

 まずはクラシック音楽の分野から「無窮動」だ。辞書を引くと、「始めから終わりまで速い動きの同一音型が休みなく続く楽曲」と出てくる。

 ラテン語の「Perpetuum mobile」を翻訳した語で、「常動曲」というのが第一の訳らしく、辞書とかを引くと「常動曲」で項が立てられていることが多いっぽいのだが、僕の経験では「無窮動」と書かれていることのほうが多い*2気がする。

 

 まあ、そうですよね、かっこよさが段違いなので、「無窮動」と書いてしまいたくなるのは分かる。なんかあれですね、僕の世代としては、なんかかっこいい詠唱を言ったあと、縛道のなんとか「無窮動!」と凄みたいところがある。

 

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パリンプセスト

 紙のかわりに「羊皮紙」が使われていた時代、羊皮紙は高かったので、すでになんらかの文書が書かれている羊皮紙のインクを消してその上からべつの文書を上書きする、という資源節約法がたまに行われた。

 そういうふうに、その下に消されたべつの文章が眠っているような羊皮紙の文書を「パリンプセスト」と呼ぶ。もともとは(たぶん)書誌学の言葉だが、「文書の上にべつの文書を上書きする」ということを比喩的に解釈して、テクスト分析の用語としても使うことがあるようだ。

 

 言葉の響きと指している物事がどちらもミステリアス。つぎのFateのサブタイトルになってもいいくらいかっこいい言葉じゃないでしょうか。

 

ゴーイング・コンサーン

 経営学の分野にあるぐっとくる言葉が「ゴーイング・コンサーン」だ。企業は活動を永遠に続けるものである、という仮定を表す言葉である。「ゴ」と「グ」や「ゴ」と「コ」の対とか、「ー」や「ン」のある位置が良く、差し色の用に入っている「サ」がとても良く、かっこいいというよりは調和にとれた優等生のような言葉である。

 ただ、英語で読んでもよさはさほど感じられない。「ゴーイング・コンサーン」はきっと英語話者でも日本語読みするのを好むのではないか。

 

 用語としての意味もとても良い。理論をすっきりさせるために入ってくるが、理論を離れて現実的に考えるとよくわからない仮定、に出会うのは学問のなかでもかなり良い瞬間である。経営学という比較的俗っぽい学のなかにごりごりのそれがあるのも2度おいしい。

 

 ちなみに今回取り上げた、「無窮動」「パリンプセスト」「ゴーイング・コンサーン」では皆さんはどれになりたいですか? 僕は「ゴーイング・コンサーン」がいいです。

 

*1:読めないでしょ?

*2:「常動曲」はそういう曲名の曲があるので、一般名詞としては「無窮動」のほうが使いやすいのかもしれない。