しばらく見ないうちに、前半と後半ではかなりやりかたを変えるチームになっていた。この横浜F・マリノス戦で前回輝かしい成功を収めた0トップ・マンツーマンシステムを採用した札幌だけど、今回は微妙に上手くいかない。
札幌のプレス開始が早かったのか、マリノスの作戦なのか、ずれが生まれていたのはマリノスのサイドバックと、札幌のウィングバックがかみ合うところだった。守備時最前線の位置に立つチャナティップ選手と駒井選手は相手のセンターバックにプレスをかけるのだけど、相手サイドバックにたいして札幌ウィングバックがプレッシャーをかけることができず、サイドを経由して簡単にプレスが空転させられる展開が序盤は目立った。
もうここは思い切っていくしかない(行ってダメだったらあきらめるしかない)札幌のシステムなのだけど、思い切って行けていた前回に比べて、選手に迷いがあったのかもしれない。
このかみ合わなさはすこしずつ改善されていくのだけど、求める形である「相手サイドバックで時間と空間を奪い、プレーの余地を限定してから、中央に出てくるパスを奪う」という形を作るには至らなかった。
前半は攻撃にも問題を抱えていた。いい形で中盤で前を向いたシチュエーションでも、狙われるのは裏へのキーパスばかりであり、デイフェンダー全員が横並びになってカバーの意識が強かったマリノス守備陣にうまく対応されてしまった。
いったん攻撃を作り直して、そこからでもフィニッシュにいたれるんだぞ、という形を何回か見せていれば、マリノスDFも1人か2人くらいは迎撃に出てこざるを得なかっただろう。迎撃に出てきたときにつく裏こそが、決定的なチャンスにつながるのだ。
後半では選手を3名入れ替え、まずは性急な相手最終ラインへのプレッシャーを止めた。プレッシャーをかけるのはバックパスが出たときとか、なんらかのきっかけでマリノス守備陣に空間と時間のディスアドバンテージができたときである。攻撃時は、裏だけではなく、トップに持たせたり、後ろで回したりして、本来の札幌が持っている形を繰り出せていたと思う。
★8/25火 横浜FM前日 #ミシャ監督⑪ ゼロトップについて「なぜ我々が今こういう戦い方をしているか分かりやすく説明しよう。我々にとって鈴木武蔵は特別な選手だった。特別なスピード、それを生かした攻撃、守備もしっかりとでき、運動量も得点能力もある選手だった。その選手は今チームを離れた」
— コンサラボ/UHBコンサドーレ取材班 (@UHBconsalabo) 2020年8月25日
★8/25火 横浜FM前日 #ミシャ監督⑫「武蔵がいれば自陣に引いてブロックを作った中からボールを奪って『ロングカウンター』というのが1つの攻撃オプションだった。ただ今彼と同じような能力、スピードを持った選手はいない。となれば、自分達の戦い方に少し変化を付けていかないといけない」
— コンサラボ/UHBコンサドーレ取材班 (@UHBconsalabo) 2020年8月25日
★8/25火 横浜FM前日 #ミシャ監督⑭「前で奪って『ショートカウンター』というのが今のチームの狙い。選手の素材が変わった事で自分達の狙いも変わってくる。重要な選手の移籍によってチームの戦い方に変化を加えていかなければいけない状況。だからこそ今の戦い方がある」
— コンサラボ/UHBコンサドーレ取材班 (@UHBconsalabo) 2020年8月25日
ミシャ監督はこういうことを言っていて、実際に前半はそういう戦いをした。メディアに言っている以上、相手は必ずそれを知っている。チョキを出すと宣言しつつチョキを出して戦ったようなものであり、しかもたまにグーやパーを織り交ぜますよと言うようなチョキではなく純粋なチョキだった。その状態で戦った選手のクオリティをどうこう言うことはできないように思う。
現有戦力を使ってマリノスに勝とうと思えばやれることはいろいろあったと思うが、あえてそれをしなかったのは、今年は降格がなく入場料収入も望めない、特別なシーズンだったからなのではないか。
ミシャ監督は札幌に就任してから、いまいる選手の能力から逆算するようなシステムでゲームに臨むようになった。札幌というクラブが監督のニーズに応えて選手を連れてくる、ということができるほど裕福なクラブではない、というのがその根底にあるだろう。ミシャ監督と野々村社長のあいだにはこの点で、協調行動をとっているように見える。社長はクラブをおおきくすることを第一に考えていて、監督は社長の意図を汲み、そのなかで最大限クラブの利益になるように毎試合に臨んでいる。
クラブの利益になる試合への臨みかた、とは、保有している選手の市場価値を高めるように戦うことであり、それは目先の一勝を毎回狙うことと必ずしも両立しない。横幅と縦の幅を使うこれまでの戦いかたとは真逆の、マンツーマンで相手の判断能力を奪い縦に早く圧殺する最近の0トップシステムを採用したのも、それが理由なのではないだろうか。北海道出身の若い選手を最大限起用できるのがこのやりかたなのだから。
負けが込んでも降格はないし、もともと観客は上限が5000人なので入場料収入も落ちないだろう。「スペクタクルなサッカーをする」ことを目標として掲げることで、ファンの心を繋ぎ、そのあいだに、勝ち負けをある程度度外視してこの長いプレシーズンを戦う。
程度の差はあったが、野々村社長が就任してからずっと、このチームは社長のチームであったのだと思う。ついていくしかないですね。
とはいえ、ずっと結果が出ないと選手も自信を無くすし、自信を無くして思い切れない状態のプレーになっちゃったら肝心の成長も阻害されてしまうのでは?と思うので、どこかでは上昇気流にのらないといけない。このままやっていても、シーズンのどこかではこれが好転するという目論見でいるのでしょう。信じて応援していこうと思います。