ボーカロイドを体系的に聴きたいですことわよ

 

 世代的にはぴったりなはずなのだけど、音楽の趣味を育てていく過程でボーカロイドにはまったく触れてこなかった。

 

 すでに好きな、聞くまえから好きだってわかるような音楽だけではなくて、最初は受け入れられないだろうなというような音楽も聞くようになったのは20歳前後になったころだったと思う。

 そのころ以降は単発でいろいろボーカロイドの曲を聞いたりもしていて、そのなかには当然いいなと思うようなものもあって、それはけっこう聞いてきた。けれど、最近この動画を見て、もうちょっとリアルタイムに、体系的に、歴史的発展を追うような形でボーカロイドを体験していたかったな、という気がしている。

 

 

 とりあえず現時点で好きな曲を整理していきたい。ボカロを聞いてみようかな、って思ったときに見つけた、「100万再生されたボカロ神曲を解説する」みたいな2ch(そのときはまだ5chではなかった気がするけど定かではない)スレッドのまとめをみていて、そのなかで一番好きだったのがこの「Chaining Intention」だった。

 全体的に行儀がよいエレクトロなポップソングで、それをちょっと崩そうとちょけてるところもなんだかんだ行儀のいい、そんな感じがとても個人的な好みに刺さる。

 

 「LOL -lots of laugh-」は映像も含めて提示している世界観がとても良くて夢中になった。ゲームセンターのなかにいるみたいな、ガチャガチャと騒がしいんだけどそれがスイートでポップだって感じがとても感性に良い。歌詞のフレーズの選びかたにもここにしかないワンダーがある。とくに「チョコレイトバスタブ」っていうひと単語は素晴らしくて、いくらでも想像をかきたててくれる。

 

 この「ベニー・プロフェインみたいな奴」という曲は、曲の良さを考えるとびっくりするくらいだれにも聞かれてない。あまりにも誰にも聞かれなさすぎてYouTubeでは限定公開になっており、ふつうに検索しても出てこない。僕は再生リストに登録しているのでいつでも聞けるのだけど、そうではないひとにとっては悲しいニュースだろう。

 軽やかなノリのスキャットと妙に安定感のあるベースラインが独特の浮遊感を作っていて、これを聞いたときとおなじ感じになれる曲はいまのところない、と思えるようなユニークな曲になっている。

 

 「ベニー・プロフェイン」というのは20世紀を代表するアメリカ文学の大作家、トマス・ピンチョンの小説『V.』の主人公の名前で、それを調べているときに偶然見つけた曲だった。まさかそんなことがあるなんてね、世のなかは不思議。

 

 「世界でいちばんお姫様~」という印象的なフレーズからはじまる、ボーカロイドのモダンクラシックスな曲なのだけど、この曲というよりはこの手書きPVが本当に好きなんですよね。製作者の熱とフェチがダイレクトに感じられる、いや、こんなあからさまで、良い意味でプリミティブな作品があっていいのか…、見るたびにエモすぎて涙ぐんで、なんか心地よい恥ずかしさがしてしまう。長く後世に残っていってほしい。