これで直近のリーグ戦6試合のうち、5試合で敗北したことになる。これくらいになると上司がサッカーの話題を振ってきたときなどには力ない返事をするしかなくなり、世界にあふれているインタビューや番組といった良質なサッカーコンテンツなどもまったく楽しめなくなるのだが、……僕の気分の話をしていてもしょうがないでしょう。愛してやまないトッテナム・ホットスパーがいまはぜんぜんうまくいっていない。
きっかけはケインが負傷退場した、ホームでのリヴァプール戦でしょうか。それまでのトッテナムは、ポジションを落としてボールを受けるケインを攻撃の起点にしていたのだけど、……このとき負傷したケインが戻って来てからは、攻撃の起点から終着点までをすべてケインに任せる「ケインお任せ」システムをいったんやめて、2列目にルーカス・モウラやラメラといった、チャンスメイクができる選手をそろえ、それに伴ってエンドンベレを一列下げ、それに伴って相手の守備ブロックの外でボールを保持する時間を作るというシステムのサッカーに移行したように思う。
プレミアリーグでFWがポストプレーをしながら生きながらえるのは大変である。とくにトッテナムは、ケインを精神的な中心点として成り立っているチームなので、この「ケインの負担軽減策」はそれなりに合理的なように思えた。
……しかしまあこれが結果に結びつかないんですよね。相手のブロックを打開する組織的な攻撃をモウリーニョが仕込んでいるわけでもなく、出番をもらったラメラとルーカス・モウラはいいプレーはするんだけど相手の守備ブロックに対して常に脅威になるわけでもない。
シソコが守備的MFの位置からベンチに下がったことにより、なにがなんでも守り抜くぞ、みたいな守備時の迫力が消え、カウンター時にソンがわがものとしていた前線のスペースもなくなった。
この試合でもそのうまくいってなさはそのままだ。さくっと2点を先行された後、モウリーニョが頼りにしたのは、規律正しいソルジャーとは言えないけれど、それでも硬直した局面を変えるなにかを持っているベイルとデレ・アリ。最終的には、ソンとベイルをウィングに置き、トップにケイン、その下にデレ・アリとルーカス・モウラ。
……たしかに、そうなってからあとの試合は、見ているぶんには面白かったけど、そんな面白試合をするためにスパーズに来たわけじゃないでしょう、モウリーニョ。
2020年にできていたモウリーニョっぽい勝ち方はスーパープレイヤーケインの献身がなければ再現不可能なもので、ベイルやアリ、ローズといったソルジャーではない選手をソルジャーに変えることができたわけではなく、なりふり構わず点を取りに行く面白サッカーをしても結局幸運に嫌われて負ける、……というんじゃ、本当になにをもたらしてくれたのかわからなくなってしまう。