東京事変「ブラックアウト」について

 

 

 東京事変のブラックアウトという曲がけっこう好きで、「なにか東京事変の曲を1曲聞いて眠るか!」というときにはこの曲を選ぶことがけっこう多い*1。みんなけっこう好きな曲だと思うけど、この曲について強く語っている人ってあんまり見たことなくないですか? この2つあとに来る「透明人間」の印象が強すぎるのかな。

 

すきポイント1 イントロのドラムはもはやリフ

 いちおうリフレインらしきギターのフレーズはあるのだけど、ブラックアウトと聞いていちばん先に思い出す、とっかかりになる部分というのはイントロのドラムの特徴的なリズムではないでしょうか(サビのメロディーも雅ではあるけれど、微妙にキャッチーではないですしね)。

 スネアの快調なビートが始まったと思ったら裏拍のバスが入るのが、とても良くて、毎回再生ボタンを押した直後に興奮してしまう。

 

すきポイント2 シームレスなサビへの移行

 歌でいうと「北へと逃げ去った様」「二人を匿っている」のところ、サビ前の引きつけるようなメロディーが続くのかと思いきや、急転直下でそのままサビへとつながっていくところがかっこいい、かっこいいと思います。

 そのサビも、……というか曲全体を通してもそうなのだけど、この曲には繰り返し部分があまりなくて、聞いている身としては曲のなかで少しくらいは繰り返されるフレーズのなかで安心していたいのに、それをどんどん置いていくように展開していくスリリングさが味わえる。

 

 唯一ゆったりと繰り返す部分が、まったくないのではなく最初のフレーズにあるのも良いですよね。

 

すきポイント3 2番頭の一瞬の静けさ

 それまで軽快になっていたスネアがなくなって、ここではシンプルな4つ打ちのバスになる。かき鳴っていたギターも止まってキーボードだけになって、曲の空気が変わる。曲の展開に連れ去られて、それに置いて行かれないようについていったんだけどあるときふっと我に返って、あれ、ここはどこなんだろう? と思う、そんな、階段でいう踊り場のような部分になっているのではないでしょうか。

 ただ、この静けさは長くは続かず、すぐにほかの楽器が合流してつぎの展開に流れていく、静けさすらもスピーディー、そこがまたかっこいいのだと思います。

 

すきポイント4 煙に巻くような終わり方

 もう聴いて長いのであまり気にしたことなかったのだけど、冷静に考えてけっこう変な終わりかたしていますよねこの曲。最後のほうでこれまでの切迫感を冗談にするような、コミカルな終わりかた。

 たしかに、つぎつぎつぎと息つかせない展開を味にしている曲なので、終わり方が難しいというか、曲の内在的な特徴から素直に出てくる終わりがないというか、ちょっと流れを切るような終わりになっちゃうのもしょうがない曲ではあるとは思う。

 

 でも、ここをへんにフェードアウトにしたり、切迫感+こと切れみたいなシリアスな終わりかたにしてしまうと、「大人」というアルバムの曲にはあまり似合わない若い曲になっていたのかもしれない。それを思うと、この煙に巻くような終わりかたも、適切な選択だったと言えるのかも。

*1:より頻度が高いのは「月極姫」とか「ランプ」など、数えるほどである。