キャンドルは燃えつきるまでそこにいた


キャンドルは
燃えつきるまでそこにいた

 

「ごめんなさい」と言いながら
私が点したその火は
部屋のなかのわずかな空気の動きに揺れ
私の瞳の中で揺れ
その瞳のなかの火が
点されるときに言われた
「ごめんなさい」はなんども重ねられ
くりかえされ
火は
「ごめんなさい」に報いようと燃えた
私の「ごめんなさい」に答えるために燃えた

 

キャンドルは
燃え尽きるまでそこにいた

 

火をつけたのは私

 

そしてなにも知らないのは
ソファの上で眠り
朝が来ても目覚めることのない男