オール・オア・ナッシング:トッテナム・ホットスパー

 

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 「オール・オア・ナッシング」はAmazonが製作するスポーツを題材にしたドキュメンタリー番組であり、ひとつのチームのひとつのシーズンに密着する徹底的なスタイルでスポーツファンには知られた存在だ。

 2019年には、フットボールの完成形ともいえるようなスタイルで見事プレミアリーグ圧倒的優勝を果たしたマンチェスター・シティの17/18シーズンを特集した。

 

 ……そのときのシティのイメージが強くあったので、2020年の「オール・オア・ナッシング」が19/20シーズンのスパーズを潜入取材の対象に選び、潜入をはじめたというニュースを聞いて、「大丈夫かな」と思ったのをおぼえている。

 

 ……悪い予感は的中し、前年度チャンピオンズリーグファイナリストという肩書を背負って挑んだ19/20シーズン、スパーズは長く苦しい1年間を過ごすことになる。もちろん、ボールボーイのスーパーアシスト*1や、ソンのマラドーナクラスのドリブル*2、シティ戦での会心の勝利*3と、スポットではうれしい出来事はあったものの、全体として見れば、歯車がかみ合わず、チームに求められているものを下回ったシーズンだと言えるだろう。

 

 せっかくの「オール・オア・ナッシング」の年がこのシーズンか、とファンとしてはやや苦く、番組が公開されてからもちょっとのあいだ手をつけられずにいた。

 

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 なんでいまになって観たのかというと、スパーズは目下絶好調! マンUを大量得点粉砕したあと、正念場のシティ、チェルシーアーセナル3連戦を2勝1分無失点で抜け、リーグでも首位に立っているからなんですね~~!! いや~! 推しが勝っているときのサッカー周りのコンテンツほど楽しくてしかたのないことはない!

 

 ドキュメンタリーは非常に面白かった。基本的にはあくの強いダニエル・レヴィ会長とジョゼ・モウリーニョ監督をメインに据えたものなのだけど、その合間に挟まれる選手の声や表情が胸を打った。

 

 ひと言に「シーズン」と言っても、長い。サッカーファンはそんな長いシーズンを、飽きもせずその時々の話題を語りあって過ごす。試合を繰りかえし、カレンダーが消化されていくごとに、そのときデビューした選手、大けがをして戦列を離れた選手がいて、そのとき契約問題で揺れる選手、大活躍してほめたたえられる選手、監督に使われなくなって「スランプか?」と心配される選手、ピッチの外で大問題を起こす選手がいる。シーズンの途中に別れる選手がいて、新たに加わる選手がいる。

 そういうふうなサッカーファンの話題の自然なリズムに合わせて、選手たちにスポットライトが次々に当たっていく構成が良く、あっという間に観た。

 

 いちばん印象に残ったのが、チーム内の練習試合でダイアーがソンにタックルしてチームが険悪になるところ。そのつぎの試合でソンとロリスが前半終了後に大げんかをするんだけど、ふたりともそんなイメージのない選手だった(ダイアーとダイアーがケンカするならわかるが…)のでけっこうショッキングだった。その背景には、ダイアータックル事件があったのか……。