Hot Hot Heat

 

 最近はとっても寒くなってきたのでもっぱらHot Hot Heatのアルバムを聞き返している。カナダ、ブリティッシュコロンビア州にあるビクトリア*1という都市出身のバンドで、5枚のアルバムを出し、バンドとしての使命を終えたようにして解散した。

 

 チープな音、渋滞を起こす各パート、ひねくれたボーカル、そしてなによりリズミカルで耳に残るメロディーを特徴とするバンドで、上記の要素はぜんぶ僕が大好きな要素なのでした。とくにメロディーメーカーとしての力は頭一つ抜けるところがあって、1枚目や2枚目のアルバムはメロディーの良さでずっと聴きつづけることができる。

 

 音楽としての完成度、深みを増していく、という形で向上していくことは程度の差はあれ音楽家はだれにでもできることだとは思うのだけど、親しまれる良いメロディーを作る能力というのはひょっとしたらそういう、向上できる能力とは別のものではないのか、と思うことがある。メロディーメーカーは生まれながらのメロディーメーカーで、それも残弾が決まっている。メロディーは撃ち尽くしたら終わりで、補充はできないのだ。この時期のHot Hot Heatは惜しげもなくそのポップな弾丸を打ちまくっている。

 

 思い浮かぶメロディーをその良さに任せて撃ちまくっていたファーストアルバム期を経て、この曲の時期になると、メロディーをしっかりと演出した端正な名曲が次々と聞ける。このバンドのパンク感が好きだったひとはひょっとすると物足りなく感じたかもしれないけれど、これはこれでよいものです。

 

 曲は3:15ごろからはじまる。その他の種類のバンドと違って、ポップセンスを頼りにしているバンドは進化し続けなければならないという宿命がある。耳に心地が良い、という曲だけを何年も何年も繰り返していくわけにはいかない、本人たちが納得いかないのでしょう、きっと。キャリアの終盤ではこの曲のような、ひねくれ度が増した、しかし根底のところでは突き抜けるほどポップな佳曲をいくつも作った。

 

 そんなHot Hot Heatのなかでもうほんとうに生理的に大好きな曲がこちら。きらきらと渋滞したチープな音に宿る聖性、ダサさの極まりないMVがそれを引き立てている。サビの「はーもにかずあんたんばりーん」の節の乗りかたも本当に好き。この曲に限らず、ほんとうに、ダサいものに神が宿った瞬間がとても大好きなのでした。

*1:州都である。有名なバンクーバーという都市がある州ではあるが、州都はこちららしい。