気持ち悪い場所を離れて
冷たい空気の実家に帰れば
部屋の窓枠に並ぶ
研究に一生かけてもいいような本たちが
逆向きに
私を見つめている
布団をかぶったあと
眠りにつくまでの間
私は夢を見る
選ばれなかったものが
こちらを見つめてくる
動作のない夢を
自愛は万能薬ではないが
かわりに確かに存在している
雪の降る庭が白く
暗やみの中で風邪をひいている
前は方向ではなく
いのちが倒れていくプロセスだ
これからは
自分の目と指を台無しにする
長い時間
困難は分割せず
むしろこまごまとした出会いを
ひと固まりの困難に作り上げながら
謎のなかに
暮らしていく