航行をあきらめて


航行をあきらめて
地球に落ちることにした夜
ひさびさの重力が
身体に懐かしかった

 

遊園地を目指して
新しいやり方で歩いた
旅の目的地はいつだって
失った故郷のかわり

 

怪訝そうな顔のキャストたち
けれども僕を歓迎してくれて
僕は虹色のたすきをまとい
ジャングルと火山のエリアで
毎日毎日案内した
「喫煙所は、あそこです!」

 

そして夜は自由だった

 

大観覧車は
星の光を受けるアンテナ

 

遠い故郷と自由につながっている

 

メリーゴーラウンドは
遺伝子をつながり合わせる装置

 

ささやかな勝ち負けを繰り返す

 

それだけで満足して
異星で暮らす定めを愛した

 

そして
いつか
また

 

文明の寿命がやってきて
電気がいつのまにか来なくなって
みんながそれどころではなくなる、そのときまでは

 

「出口は、こちらではありません!」

 

遊園地のあたたかな
光のなかの毎日を
選んだ