濡れた十字架を背負って
雨の降る夕方をイエスは
不倫の現場へと向かう
たくさんの証拠を通行人の瞳に残しながら
母さんがくれた睡眠薬は
助手席のドアポケットのなか
海浜公園駐車場が真っ暗で良かった
だけど全員に覗きこまれている
うしろめたさを形象するなにかを作ろう
いつか十字の形をした家で
リビングと寝室をつなげて暮らし
情けなさを目撃するだれかを作ろう
生まれてきた子供たちを
大人になるまで育てよう
安堵して後部座席で迎える
無菌化された夢のなかでは
長い長い時間のあいだ
ほんのすこししかしゃべらない