ネクライトーキー、「ONE!」

 

 一年くらい前からYouTubeでよく聴いていたバンドが半年くらい前に1stアルバムを出した。聞いていたバンドが1stを出すという機会に居合わせたのは人生で初でした。

 

ONE!

ONE!

 

 そのときにひととおり聞いて、また最近思いだして聞きかえしている。ボカロPのバックグラウンドがあるギターのかたがメインとなっているバンドで、舌足らずでかわいい感じの声質だけど熱唱系、という特徴のはっきりしたボーカルも目立っている。

 

 基本的には軽快だけど、一曲に詰まっているアイディアが多いのでかなりひねくれて聞こえるポップ・ロックを鳴らしている。それぞれのパートもかなり自己主張が激しく一体感やまとまりには欠けている。が、それが不快というわけではなく、むしろ、その明るいカオスを楽しめる感じ。その点でいうとちょっと東京事変とかに似ているかもしれない。

 と思いきや歌詞は意味無しのものから、モラトリアムの鬱屈感を歌ったものまであって、全体として具材の多い鍋のようなバンドになっている。

 

 オリジナリティというよりは継承性に特徴がある。音楽の歴史を貫く系譜を考えるなら、その分岐点というよりは合流地点にいるようなバンド。アルバムを通しで聞いているとなんとなくその由来を想像できるような音が聞けたりする。この曲はイントロを聞いて僕もうっすら思ったのだけど、やはり本人インタビューによると、Blurの「Girls and Boys」をユニコーンが演奏したらどうなるか、というコンセプトで制作されたらしい。*1さすがの具材の多い鍋感だ!

 

 フジファブリックが香る曲もあった。

 

 アルバムではもうすこし幅広い曲調に挑戦していて、また既存の曲も新規に録りなおしを行っている。個人的には「だけじゃないBaby」のテンポがアルバムではちょっとゆったり目になっているのが気になっていて、たしかに楽器のほうはこのゆったりとしたテンポのほうがなにをやっているのかが分かりやすくて聞きやすいんだけど、ボーカルは逆に、微妙な表情をつけられるタイプではないので、どちらかというと早いバージョンのほうが良く感じる。

 

 11曲目(最後から数えて2曲目)の「明日にだって」もちょっと面白かった。この曲に限っては全パートがカオスを封印していて、ふつうに名曲感の漂う疾走ポップを利かせてくれる。そういうことも普通にできるんですね。

*1:ネクライトーキーのこれまでとこれから。4人全員インタビュー(2018.10.16)http://meetia.net/interview/necrytalkie/