「金色のガッシュ!!」の受傷

 

 「金色のガッシュ!!」という漫画をひさびさに読みかえした。完結したちょっとあとくらいのタイミングでいったん最後まで読み終わったのだけど、それ以来だとすると10年余りになる。僕にとっては自分で買い集めた初めての漫画だった。(後半は所有権および義務が移転し、買っていたのは弟や従弟だったが)

 

金色のガッシュ!! 完全版(1)

金色のガッシュ!! 完全版(1)

 

 

 1巻から18巻くらい(「千年前の魔物」編が終わってテッドと一緒にアースと戦うくらい)までは100回読みかえした。ガッシュ!!は100回読んでも100回面白かった。ひさびさに読みかえすと、魅力の再確認とともに、当時は気づけなかったいろいろな再発見があった。

 

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 ガッシュ!!の戦闘描写において焦点が当てられているのは、攻撃を繰り出す場面でも相手を打ち倒し破壊する場面でもなく、「攻撃を受ける」場面である。とくに、両手を広げて身を守る手段もなにもなく相手の攻撃の前に立ちふさがる光景は、いろいろなキャラによってなんどもなんども繰り返される。

 

 自らに降りかかる攻撃を覚悟を決めて甘受する。反撃や防御の手立ては限られているかほとんど見込めないが、とりあえずこの一瞬を、自分の命を度外視して痛みに耐える。そういう局面を美しく、価値があり、必要なことであるとして描いている。

 

 「お前は王をも殴れる男になったぞ」「私はいつだってカバさんだった」「清麿が変わったんじゃない」「私の後ろには、傷つけてはいけない人がいる」「(千年経った魔界でも)私が友達になるのだ!!!」などといった力の入った場面には、だいたい必ず、自らの身を顧みず、致命的な攻撃を無抵抗でただ受けとめたその回の主役たちの勇敢な姿を見ることができる。

 

 ほかにも、個人的に好きなシーンをいくつか挙げさせてもらえば、

・四体分離バオウ・ザケルガのためにひたすらリオウの攻撃を受け続けた高嶺清麿。

・拷問の脅しを受けている自分の女が攻撃してくるのを「俺の身体くらい、いくらでも貸すぜ」と言って背中から攻撃を受け続けるテッド。

・その姿を見て勇気を取り戻し、電撃の拷問を甘受しながら立つチェリッシュ。

・ラギアント・ジ・ゼモルクという見た感じあきらかに強い4連発の術で狙われた高嶺清麿を守るために(よせばいいのに)わざわざ集まってきて身を挺して守り、そのまま一人ずつぼこぼこにされるガッシュ、ウマゴン、レイラ、ティオ。

 

 もっとあるけどもう止めます。恥ずかしながら申し上げると、僕は覚悟の決まってる人間がぼこぼこにされて、だけど、気持ちだけでそれにぎりぎり耐えている、というようなシーンがなによりも好きです。ひょっとしたらガッシュ!!の爪痕なのかもしれない。

 

 もちろん、どれだけの受苦があっても物語のなかでは、物語のなかだけに働く不思議な力で死からは免れるし、痛みに対する相応の良い報いがある。受け止めることには意味がある。ガッシュ!!ではそれは、助けが来たり罠が発動するまでの時間稼ぎのときもあるし、受け止めたことが相手の心を動かし、どちらかが倒れる以外の結末へ導くこともある。あるいは、現実の世界では再現性のなさそうな物語特有のストーリーの力によって、ダメージを無抵抗でただ受けとめたことが勝利へつながる伏線になる、ということもある。

 

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 新しい発見もあったが、変わらない再確認もあった。

 

 みんなそうだとは思うけど、この子が、超好きなんですよ。