「LIVE!!」

 

 ラブライブ!が好きなので名前が似ているこのマンガも好きかもしれないな、と思って読んだ。ちょっと衝撃的な内容だったので、とりあえず印象には残った。

 

 作者の市東亮子さんは「やじきた学園道中記」が大量に実家にあることもあって僕のなかでは有名な漫画家だった。ブログを読んでみるとJリーグのファンでもあるらしい。

 

火星居留都市

人工磁気シールド、人工大気など高度な科学力によって

生命体の生存を可能にしている

だがそこに住んでいるのは地球人ではない

直立二足歩行こそしているものの、まさに進化の過程であった

 始まりからいきなりすごい。火星の都市から物語は始まるが、すぐに主人公たちが人類ではなく(よく似た姿をしてはいる)、どこか遠い母星から避難してきて火星にコロニーをつくった難民宇宙人たちだということがわかる。

 

f:id:kageboushi99m2:20190607230526p:plain

 主人公のミナミ、どことなくナランチャや黄天化を思い出してしまい、……ひょっとしたらあっけなく死ぬのでは? と懸念していたら全体の25%くらいまで進んだあたりで本当に死んでしまった。

 

 ミナミは惑星探査船に乗り込み、サムと船長と旅をすることになる。が、火星本部での異常を探知しあわてて引きかえすと、火星の都市は跡形もなく消えていた。天涯孤独の身となってしまったミナミとサムと船長は、月に移動。目のまえにある地球で知的生命体が進化するのを待ち、50万年後彼らと共存することをめざして冷凍睡眠に入った。

 

 ここまでがイントロダクション。そのあと時間は流れ、モニュメント・バレーでの第三種接近遭遇から本編が始まる。そのあとは謎めいた組織とかいろいろな勢力とか謎の強い女とか謎の隔絶された村が出てきて話は複雑になっていく。そして文庫版1巻のあとがき。

 

 ところで一巻目ではまだわかりませんが、二巻目から登場人物が変わったりして、この先「アレ?」と思われる読者もおられるかと思います。

 その理由はこうです。この作品はスタート時では原案者がおりました。連載が始まってしばらくしてその方との意見が合わなくなったことにより原案者から離脱し、登場人物や一部の内容を変更せざるを得なくなりました。

 一応連続性を保つ作りになっているけど、本当に新しいキャラが出てくる。2巻からはそれまでの展開を引き継げるだけ引き継いで、残りは完全にスクラップ&ビルドした新しい物語を読むことになる。

 

 もちろんそれは作者にとって不本意だったことに間違いはなさそうで、このあとも文庫版のあとがきには、自分の過去作に対する苦い気持ちの正直な発露が見られる。3巻あとがきでは当時、創作の渇きに突き動かされて、自分のキャパシティを越えて仕事を引き受けてしまったこと、その気持ちがあるとき途切れてしまったこと、4巻(最終巻)のあとがきでは、「ぶっちゃけ、この終わり方で満足しているのかと聞かれれば『否』でございます。(…)ベストを尽くしたとは言えると思っています」と作品の出来にまったく納得がいっていないとぶっちゃけている。

 

ご覧の通りです。これが私の全力でした。

そんなわけで、今回この本をお買いあげくださって読んでくださった読者には、ほかでもなく「読んでくれた」というその事実に心から感謝いたします。

 自分の不良債権と真剣に向き合った人間だけが出せるREALが4巻のあとがきにはあふれている。

 

 とはいっても、作品全体としては卑下にうなずけるほどつまらないというわけではない。全体の構成に並々ならぬ苦心が見えるだけで、個々のシーンやキャラクターは悪くはない。途中からキラーマシンと化すランはキャラ造形も戦闘描写も魅力的だし、とくに「俺? ただのゴミだよ」と自己紹介して人を殺すところはかっこよかった。リン・リーガルとイッセイのお互いをなんとなく気にするコンビも好きだった。