ジャンクなのもぜんぜんいいけど、たまには良質なYouTubeが見たい! そんな時はありませんか? ……そんなときにおすすめなのが「野食ハンター茸本朗(たけもとあきら)ch」である。
まあいろいろ動画はあるのですが、今回はこの一本だけとりあげて、どこが面白いのかを並べていければいいなと思います。
野外、……ジャングルとか無人島とかではなく、行こうと思えば今週末とかに行けるような場所で、生き物を採取し、それを調理して食べる。……というのが「野食ハンター茸本朗ch」の動画の基本的なパターンである。
このシンプルな構成のなかに、何個も「へえ~……」と知的好奇心をくすぐる学びがあるのがいいんですよね。たとえばこの動画では、「温排水」というマイナーな環境問題が取り上げられる。
都会では人々が、とくに冬などはお湯をたくさん使うので、それが流れていく排水も温かくなってしまう。……汚れは下水処理場で取り除けるけど、温度はそのまま水域へ流れていく。結果、水温が上昇し、本来そこでは生きていけなかった暖かい地域の生物が暮らせるようになり、在来種を脅かすようになる。ということが起きているらしいのである。
だいたい捕獲のときに1ポイント、そして調理のときにもう1ポイントきもちのいい雑学が語られる、というのが多い。
捕獲のときには、実践的に生き物をつかまえるにはどういうところを狙えばいいかとか、生態系にいま起こっていることとか、生物利用上の問題とかが解説されるし、調理のときには癖のある食材をどう料理するかのテクニックや、取り扱う食材の栄養学的情報、食材の歴史的経緯や現在の流通だったりがでてくる。
語り口もちょうどいいんですよね。退屈な、という意味合いのない、いい感じの淡々とした調子で動画が進んでいくのが心地よいです。
ここは個人的な萌えポイントになるんですけど、調理風景がシンプルなのがいいですよね。ここで振っている塩とかちょっと面白くないですか? YouTuberだったらミル付の岩塩とか、なんかメタルな容器に入ったかっけえ塩とかをふって華美にしよう、とか考えそうなものだけど、そういうことはなく。
本当に最小限のギアだけで作るの、美学が感じられていいですよね。*1主役は「野外でとれた食材」なんだという感じがするというか。
あと料理そのものも特別な技術が要らないもので、そこも同様である。*2
実食の際には、口に運んでから料理の感想を言うまでに独特の「間」があるのもキュートだ。もともとソムリエをしていた方らしく、こう「味覚を言葉で伝える」ことにこだわりがあり、味を感じ取る時間やそれをもとに言葉を組み立てる時間が長く必要なようなのだけど、シンプルに見ているがわだと「なにも言えないってことは、今回さすがにおいしくなかったのか……!?」みたいなはらはら感があってなんか面白いんですよね。
実際、「食えなくはない」ぐらいの結果になる回も多い*3ので、本当にこのチャンネルは最後まで先が読めない。うっとりする。
個人的に好きだった動画を並べてみました。動画が苦手だという人にはだいたい同じような内容の茸本朗さんのブログ(というか文章のほうがもともとの活動)もあります。でも個人的にはやっぱり独特の口調や「間」が好きなので、最近はもっぱら動画を見ちゃうかも。
なんにせよ、おすすめですよ! 「こういうの自分好きかも」と思ったかたはぜひ。