帰ってくるまえに~「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」~

 

 あの「ボラット」の続編がAmazonプライムに! ……というニュースでタイムラインがざわついていた。「ボラット」については僕はなにひとつ知らなかったのだが、いまから見ておけば、実際に配信されて話題になったころに、「あの『ボラット』の続編観ました。さすがは『ボラット』最高だった!!🤩」と、物知りツイートができるのではないかと思い、YouTubeに300円払ってレンタルした。

 

f:id:kageboushi99m2:20201004121757p:plainhttps://www.youtube.com/watch?v=bohvP5YcvcM

 

 YouTubeには警告が表示される。カザフスタン人リポーター「ボラット」がアメリカの文化を学ぶドキュメンタリーというていで作られていて、人種やジェンダー、生活習慣や宗教にかかわるブラックなジョークをそのボラットさんが連発する。撮影の許可は取ってあるものの、なんの撮影かは知らない、……といった状態のほかの出演者がそう言ったボラットさんの振る舞いにたいしてどのような反応をするのか、というところを映し出すのが一番の見どころとなっている映画である。

 

 中身は壮絶で、同性の細かいことは気にしない友人たちと酒を飲みたばこを喫いながら、といった状態でないと、あるいは本能的な引きの感情を隠すためにあえて、じゃないと笑えるような笑いではない。なのだけど、僕がしたような反応に見られる、インテリ階層っぽい人々がもつ冷たさとか滑稽さみたいなものが強めに風刺されるような作りになっていて、そのへんもさらに考えつつ見ることになる。

 

 マナー講師のディナーパーティーのシーンのあと、ボラットは初めて自分の名前を正しく発音してもらうのだが、この非常にピエロな映画に差しはさまれた不釣り合いに直球で陳腐なシーンに、想いは(込められているとしたら)込められているのだろう。

 

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 価値観を揺さぶる試みは良いものだけど、映画としてやる以上、どうしても撮る側と撮られる側の力の非対称にたいして揺さぶりをかけるものを作るのは難しい。出てくる大学生やテレビ番組関係者、そして実際のカザフスタン政府はこの作品にたいしてかなり恨みを抱いているという。まったくそのとおりであり、同情はそっちのほうにしている。