フラン・オブライエン『ハードライフ』 ほか

 

フラン・オブライエン『ハードライフ』

ハードライフ|国書刊行会

 フラン・オブライエンの『ハードライフ』を読みました。ファーストインプレッションとしては「なんでこのような小説を書いたのか作者の心がよくわからなかったが、それはそれとして、別にしんどい読書ではなく、大変読めました」という感じであった。

 作中には明らかにされない謎めいた部分*1がいくつかあり、解説を読むとその種明かしがあるのですが、だからと言って作品全体の解釈に見通しが立つわけではなく、不思議な小説である。

 

 とはいえ、すでに一回、全力投球の作品を作っている作家の、こういう力の抜けたフォーマットの作品、的な手触りはけっこう好き。行を追いながら、楽しい時間を過ごすことができました。

 

プリンとケーキ

 プリン(右)とケーキ(左)を買った。なにげなくUberEATSを起動したら、ららぽにあるこちらのケーキ店で50%OFFセールをやっていたので、指が自然に動き購入してしまった。最近はこういうことが多すぎる。サプライズを求めて、Twitterくらい自然にUberEATSを見てしまう*2

 

 巨大な情報のシステムに行動を完全に制御されている感じがしてしまって怖いな。今度急に家に警察が来て、「あなたに殺人の容疑がかかっています。署まで来てくれますね。これは任意ではありません」と言われ、そんなことしていません!と反論しても、「ではこれは何なんですか?」とUberEATSの注文票を重要な証拠として突きつけられてしまったらどうしよう。

 たしかに頼んだ記憶はあるが、これは自分の意志ではなく、UberEATSのセールに合わせて指が勝手に動いただけなんです…、と弁解しても信じてもらえないに違いない。人生は、リスクばかりだ。

 

サンダーランドこそ我が人生」

Watch Sunderland 'Til I Die | Netflix Official Site

 というネットフリックスの番組を見ていました。サンダーランドというイングランドのサッカーチームが送った厳しいシーズンと、それを見守る人々の姿を描いたスポーツドキュメンタリーで、日本のサッカーファンの間でもよく知られたタイトルである。


 まあ面白かった*3のですが……、字幕の翻訳がちょっと良くないんですよね。スパーズのことを「スパー」と書かれたときは笑って見ていましたが、プレシーズンの試合をシーズン開幕と書いたり、「新しいManagerが来た」というのを「新しい経営者が来た」と訳したり、英語のほうにも注意を払っていないと内容を理解できなくなるくらい適当だったのが渋い。

 

 吹き替えにすると翻訳的には良くなる*4のですが、それはそれでドキュメンタリーとしての臨場感がそがれてしまうのが悲しい。試合後にファンが切れてるシーンとかはやっぱりリアルの声で聴きたいじゃないですか。なにを言っているかは問題じゃなくて、声のトーンと強さがすべてなのである。

*1:べつに読者の興味もそこまでひかないので謎のまま終わっても「はい」という感じだったのだが。

*2:UberEATS連食怠惰生活を正当化するロジックを考えた - タイドプールにとり残されても参照。

*3:とはいえ、「サッカー文化の奇妙な実態」を描くみたいな感じなので、サッカーファン向けにとってはかなり「知ってる」なことばかりが描かれるのでめっちゃ面白かったかと言われるとそうでもない。非ファンで、ちょっとこの文化に興味を持っている、くらいの層のほうが楽しめると思います。

*4:完璧ではなく、実際のTV番組や試合のアナウンスを引用するシーンなど、ネットフリックスが一次的な権利を持っていない場面では吹き替えがない、という欠点がある。