面白かったんだけど読んでて辛かった~平山洋介『住宅政策のどこが問題か 〈持家社会〉の次を展望する』~

 

住宅政策のどこが問題か~〈持家社会〉の次を展望する~ (光文社新書) | 平山 洋介 | 家事・生活の知識 | Kindleストア | Amazon

 という本を読んでいました。「社会保障」「家族と人口」「社会階層」「福祉政策」といった、社会科学でよく研究されるテーマに、日本ではあまり「住宅論」の観点が含まれていない。……ということに常々疑問を持っていた、という作者による、日本の住宅政策の特徴と至らない点、そして今後の展望を実証的な側面から概説した本である。

 

 日本の住宅政策は、「企業に就職した男性が女性と家族を形成し、社宅にすんだり家賃補助を受けつつローンの頭金をため家を購入、最終的には残債のない家で住居費のかからない老後をすごす」という「標準的な人生コース」をサポートするためのものが多く、このルートからこぼれた人には、すくなくとも「住宅」という意味では社会保障がそんなに多くは供給されない。

 

 と言ったことがデータをもとに語られ、

 

 それはライフコースが多様化し、また不況によって「標準的な人生コース」を外れるひと、戻りたくてもさまざまな事情により戻れないひとが多くいる現代の社会*1にはそぐわないのではないか。

 

 といった点が主張される。

 

住宅システムの制度は中間層の家族の持家取得ばかりを援助し、借家人、家族を形成しない人たち、雇用の不安定な人たちに微量の支援しか配分しない。この意味において、住宅条件の低劣さに苦しむ人たちの境遇は、経済次元の「自然現象」の結果ではなく、制度の産物としての側面を強くもつ。そして、人為のシステムが不利な状態の人たちを生みだすのであれば、そのシステムを人為によって改善することが必要かつ可能である。(p.281)

 

 男性か女性か、有配偶か無配偶か、正規雇用か非正規雇用か、ベビーブーム世代かそれ以降の世代か、……といった違いにより、住宅取得の環境と実績に大きな格差が出ることが、なんどもなんども、ドライだが丹念に語られるので、読んでてけっこう辛い読書だった。たしかに個人的にも18歳以降ずっと住宅確保には苦労してきたし……。

 

 (読み物として面白い、というわけではないものの)難しい内容の本ではないし、論旨も明確でわかりやすい、内容もずっと興味深いのだが、読むのにかなり時間がかかってしまった。良い本なんだけど読んでると気が滅入ってくるんですよね。

 いつのまにかため息をついて、……今日は『住宅政策のどこが問題か 〈持家社会〉の次を展望する』はこれぐらいにして、残りの時間は寝るまで楽しいYouTubeでも見るか、となる日をここ数週間過ごしていた。

*1:とはいってもこの本の刊行は2009年である。