自分がいいと思ったようにショートストーリーを作る、というのが長らく趣味なのだけど、序盤のころはおもにやる夫スレの形式でそれをやっていた。その時期の物語は、僕にとってはいわゆる「初期衝動」にあたるものが多くて、気に入っていて、いまでもすごく自分で読み返す。
その中から「ドラゴンの墓」という話を振りかえりたい。
エリート街道をやめて「ドラゴン研究」に身を投じる主人公・サーニャ*1が、「一人前のドラゴン研究者ならこいつに会っておかなきゃいけない」という人物に出会い、その後、彼の別荘を訪れてちょっとした散歩をする、という話である。
テキストのなかでとくに話が動くことはないのだけど、かわりに世界設定のなかに物語が埋め込まれていて、それをテキストが、工夫された順番で語っていくことによって物語として面白くする、情報の出しかたで勝負をするというタイプのお話となっている。
2015年に作ったものだが、いくつかはっきりとおぼえていることがある。最初は、砂浜にクジラの死体が打ち上げられたけど、それを処理するいい方法がない、最終的にはガスがたまって爆発してしまった、……というどこかのニュースから着想を得たと思う。クジラをドラゴンに変えて、ファンタジー世界でも世知辛いアカデミアの世界を描いてみたらどうかなと思ったところで大枠が固まった。
そのころちょうど、回想などの場面転換のときに形式的なマーカーを挟むのではなく、作中で語られる内容でうまいことそうだとわかるようにする、というのを試していて(形式的マーカーを省略できたらなんだかうれしいじゃないですか)それも実行に移した回であった。
そういうふうに作る必然性は内容のなかにはないので、これは実験しただけ、ということになる。ただ、そういうふうに作って話の流れが伝わっているかどうか、というのは最終的には僕にはわからないので、なかなか難しいところである。
とはいえ、どういう話なのか当然よくわかっている僕自身にとっては非常に愛着のある物語である。単純な誤字で1か所、演出面で1か所、明らかにミスしているところがあるが、まあしかたない。……しかたないは嘘かもです毎回見返すたびにちょっとスクロールが早くなってしまう。
あと、投下していたときにスレッドの順番を間違えてしまうというミスもしたのだけど、ここにリンクを張ったまとめバージョンでは編集されている。多少手間がかかるのにそこまでしてくれてありがとうございます。