どうやって終わるのかずっと気になっていた

 

 まだ書いていないのでわからないんですけど、この記事にはたぶん「銀魂」の終盤部分の抽象的なネタバレ、……もしかしたら具体的なネタバレも含まれると思うので、まっさらな状態で「銀魂」をこれから読みたいというひと、「果たしてギャグマンガのまま終わったのか、それともバトルマンガになって終わったのか」で賭けをしているひとなどはこの記事は見ないほうがいいかもしれません。

 

 「銀魂」がどうやって終わるのかずっと気になっていた。一応神楽のお兄ちゃんが出てくるくらいまでは連載を追いかけていたし、ゲームとかもけっこうやっていたので好きなマンガだった。

 ただその後は、「銀魂みたいにしゃべるキモいやつが2組にいる」「銀魂? ギャグは面白いけどシリアス編はだるいわ」みたいな周囲の声に影響される形で、徐々にあまり見なくなっていったマンガでもあった。

 

 でも、本当にそうなのか? 「銀魂」ってじつは最後まで読んだら印象が変わる、なにか持ってる作品なんじゃないのか? と最近になって思っていて、それにどういう終わりかたをしたのか気にもなっていたし、あと、実家に帰ったら全巻あった。というわけで3か月くらいかけてじっくり銀魂を読んでいたのでした。

 

 結論から言うと、「最後まで読んだら印象が変わる」作品ではあった。どうやって終わったかというと、バトルマンガになって終わった。……58巻からあとはほとんど笑いがない。*1面白かったかどうかでいうと、けっこう面白かったです。

 

 やっぱり限界はある。シリアス展開はあいかわらずご都合主義だったり、ストーリーが全部台詞で説明されてて何を読んでるんだかよくわからない。近年のよくできたバトルマンガとはちょっと比べ物にならない出来ではある。

 ギャグのほうも、基本的には過剰なキャラづけとかメタ発言とか下品ネタ、爆発とか暴力で取りに行く笑いがほとんどであり、まあ普通に読んでて面白いのだけど、なにか傑出したセンスがコンスタントにあるという感じはしない。

 

 たしかに、あまり面白くない部分も相当ある作品なのだけど、最終的に読んだら「読んでよかったな~」となった。とにかく! 57巻くらいギャグ日常回を積み重ねたあとにくる、そのギャグキャラたちが繰り広げるシリアス最終章がマジ熱なんですよ。

 これまでの57巻で何回もあった「おきまり」のギャグが、最強の敵と戦うストーリーのなかで「かっこいい」シーンとしてもう一回かぶせられる、――という、50巻ギャグをやったあと20巻バトルするという構成のマンガでしかありえない演出がなんどもされていて、ひとつひとつが良かったです。*2

 

 最終章のストーリーはまとまっているとはいいがたく、綺麗に回収した伏線もあれば、けっこう苦しいぽっと出の設定とかもあるんだけど、逆にいえば、ストーリーをスマートにおしゃれにすることを放棄してでも、……これまで57巻、ともにギャグをやってきた作中の登場人物ひとりひとりに、「そのキャラである理由がある」見せ場を用意したのは圧巻だった。*3

 

 キャラに生かされて長期連載作品になり、その長期連載の厚みを使ってキャラクターを生かしたうえでフィニッシュに持っていった。傑作として後世に残るかというとそうではなさそうな作品だけど、一本、作中でもたくさんのキャラが通しているのと同じ筋を通して完結した、ソウルを感じるマンガでした。とても良かった。

 

*1:たまに思い出したようにギャグが出てくるが没入している読者的には笑ってるどころではない。

*2:もともと演出はとても上手い作家ですよね。とくに紅桜のときの上から花柄の傘を覗くところはいつまでも覚えている。

*3:マダオのところとかとても良かった。ないた。