読んで余白に想像を巡らせてたドラクエ二次創作、「ドラゴンクエストモンスターズ+」(吉崎観音)

 

 3日前*1は誰も読んでない個人的幼少期に刺さったマンガの話だったけれど、これはけっこう周囲に読んでいて刺さっている人がぽつぽついる。なので切実度はそこまででもないが、でもおなじくらいおすすめなのが吉崎観音の「ドラゴンクエストモンスターズ+」。 

 「ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド」を原作にした、オリジナル主人公でオリジナルストーリーのマンガだといったんは言うしかないのだけど、すでにミスリーディングである。

 

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 主人公のクリオは原作同様、わたぼうに連れられてタイジュの国に旅立つのだけど、そこから先はゲームとはぜんぜん違う。テリーはなぜか姿をくらましており、牧場はモンスターが逃げ出していてからっぽ。そして、旅の扉からは「りゅうおう」が姿をあらわし、タイジュの国を攻撃する。

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 「りゅうおう」を追いかけて飛び込んだ旅の扉の先に待っていたのは、原作「モンスターズ」には登場しない魔物や、廃墟の街、……孤独に戦う戦士。

 

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 あんまり引っ張ってもしょうがないのでざっくり言うと、そこはドラクエ1の世界だったのでした。その後、主人公クリオはモンスターマスターとして、ドラクエ1の勇者だと思われる青年とともに竜王に挑むのだけど、これがアツいんですよ。

 

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 たんにドラクエをリスペクトするだけではなく、けれん味たっぷりの、だけど原作の世界観を壊し過ぎないアレンジが施されていて、ドラクエの二次創作作品としてとても満足感がある。そもそもこういう、なんか意味深でアツい断片を描くの、「ケロロ軍曹」時代からうまい作家だった…。

 

 とくに、ふたたび雪に閉ざされたロンダルキアを舞台に描く「ドラクエ2」編はもうほんとうにドキドキした。どうして平和になったはずのドラクエ2の世界がふたたび闇に覆われているのか。敵は誰なのか。なぜ、世界を平和にしたはずのローレシア王子が、自分のことを「勇者ではない」と否定して、ひとりで旅を続けているのか……。

 「ドラクエ2」編、ほんとうに幼少期刺さりまくって擦り切れるくらい読んで、ありとあらゆる余白に想像を巡らせた。

 

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 あと、キャラクターもモンスターも原作のデザインから大きく外れないながら、愛らしく描かれてるっていうのも地味な読みやすポイントだと思います。

 ほかにもメインストーリー以外の意味深な展開や、ドラクエへの細かい愛のあるオマージュ、刺さるシーンがちりばめられていて、全5巻というボリュームをおおきくはみだすスケール感のある作品です。とくに好きなところはやっぱり、……メタルドラゴンが飛ぶところ*2

 

 ふつう1巻だけどあえて4巻貼っちゃお。ドラクエが好きな人、ちょっとうがった二次創作でも平気な人、ドラクエ2の3人が好きな人などには非常におすすめです。モンスターズが好きかどうかはあまり関係ないです。