僕がこよなく愛している漫画のひとつに藤崎竜さんの「封神演義」がある。いまはさすがに世代を直撃したオタクがインターネットであまりアクティブじゃなくなってきちゃったので、そんなに話題になることはないのだけど、ひと昔前はいろいろなメディアで語り合いがもたれた、隠れた名作漫画である。
そんな「封神演義」は、紀元前1000年ごろくらいの中国を舞台に、仙人たちが「宝貝」(パオペエ)という特殊能力を持つアイテムを武器に戦うバトル漫画なのだけど、その「宝貝」のなかには、さらに際立った能力を持つ「スーパー宝貝」*1がある。
その7個の「スーパー宝貝」のうち、作中の出かたや性能などすべてを含めて、いちばんかっこいいのはなんだろう、……という問いにしてしまうと、なんらかの逆張りをかませない限りどうしても1位「禁鞭」になってしまう。
というわけで今回は、シンプルに名前のかっこよさだけでスーパー宝貝をランク付けしたいと思う。7位からカウントダウンだ。
7位 雷公鞭
第7位は雷公鞭、雷を引き起こす鞭なんだろうな…、という字面とだいたい同じ能力を持つ宝貝で、そこの距離が近すぎるのと、これはもうしょうがないのだけど所持者の申公豹と一文字かぶってるのがちょっとださい。
作中でも意味深に出てくるものの、そんなに活躍はしない。申公豹ってハンターハンターでいうヒソカと似た立ち位置なんですけど、ヒソカくらい話のなかで動き回れていればちょっと違ったかもしれないですよね。
6位 金蛟剪
これも名前の漢字と効果が近くてそこまで推しづらい、というタイプである。金の蛟(みずち)*2が出る剪(ハサミ)なので、そのままである。たぶん、この宝貝で何かしら物語上のギミックを作ろうなんて気はなく、べつに強ければなんでもよかったので、文字を読んだそのまま能力にしたのでしょう。それだとちょっと、高い順位にはなりにくい。
5位 盤古旛
5位は盤古旛。これはどういう能力なのかということと直接絡み合っていない名前で、漢字のチョイスも渋くて良いと思うのだけど、響きも「ばんこはん」とちょっときらめきがない。
ちなみにビジュアルはとてもかっこいい。「ブラックホールで宇宙がほかの宇宙とつながっている」みたいなイメージ図を意識したのだろうか。こういう異科学SF?チックな造形をさせたら、藤崎竜の右に出る漫画家はそうそういないのである。
4位 太極図
これは一般名詞で、韓国の国旗の真ん中に描かれているみたいな赤と青の模様を指す*3言葉である。ここで一般名詞を、しかもかなり格の高い名詞を出してくるのがかなりいい効果を生んでいる。
やや安直な気もするが、下手に攻めるよりぜんぜんこれで十分だ。
3位 禁鞭
まあ~でもこの順位くらいに来ちゃうのが「禁鞭」ですね。これは原作となっている中国の古典では「金鞭」という表記だったと思うのだけど、「金」→「禁」のアレンジを加えるだけで格段にかっこよくなる。ちょっと悪い意味でかっこよすぎる気もするので、多少減点はあるが、それでも二文字でしっかり決めるところなども含めて、堂々この順位だ。
作中での活躍を考えるとどう考えてもいちばんかっこいいです。
2位 六魂幡
作中での活躍はやっぱちょっと地味だけど、じつは名前がかっこいいのが「六魂幡」。とつぜん出てくる6っていう無意味な、でもたどっていけば由来がありそうな(たとえば古来中国では魂は6つの部分に分かれる、とされているとか)感じがしていいですよね。「りくこんはん」という響きも静謐ながら、相手に対する厳しさを感じられて良い。能力とのつき具合もちょうどいいでしょう。隠れた名ネーミング*4である。
1位 傾世元禳
深く考えたのですが、1位は「傾世元禳」になりました。絶世の美女という意味のある言葉「傾城」を意識した「傾世」にちょっと意味の分からない「元禳」という言葉がついていて、……これを悪くとる意見もかなり傾聴に値すると思うのだが(とくに文脈なしだと、「傾世」より「傾城」のほうが字面的にはかっこいいと思う)、それでもこう、強さを感じさせないようなそれぞれの漢字・語を組み合わせてただものではない雰囲気を出しているのが深くて良く、その点でほかのスーパー宝貝とは違う水準のネーミングになっていると思う。
スーパー宝貝以外だと、(名前だけでいえば)「九竜神火罩」、「山河社稷図」、「混天綾」、作中のもろもろ込みでいえば、断トツで「花狐貂」が好きです。
好きな宝貝をおしえてね。