夢日記(2021.7.14)

 

 2019年8月30日ぶりに完成度の高い夢を見たので書き残す。この前日も気の重いタスクがあり、それを何度も逡巡したのち「やるしかない…」とやったあと眠るように寝た夜の夢だった。夢の完成度は現実の難易度と比例してくるのかもしれない。

 

 テレビをつけると、豪華なお城のような建物とそのうえでこぶしを振り上げて朝を迎える人々が映る。日本には「千場闘争」と呼ばれる立てこもりを続けている集団がいて、このテレビ局は毎平日朝の情報番組のオープニングに、千場の砦でくらす人々を空撮した映像を流すのだった。ふだんは見ないチャンネルだけど、昨日祖母が夜遅くまで見ていた昔の映画が偶然このチャンネルだったのだ。

 

 そこで夢の舞台は「千場闘争」の砦にジャンプする。僕はそのお城の外壁から飛び出る、あの、正式名称を知りませんが、公園の遊具にある丸い輪っかの骨格でできた地上と建物上層部分を直結させるアスレチックがあって、その頂上部分の、ほぼ水平なところで暮らしている中年の貴族だった。

 

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 これ。夢のなかの僕はそうではなかったと思うが(ここで暮らすくらいなので)、現実の僕はそれなりに高所恐怖症なので夢のこの部分はかなりこわかった。6階分くらいの高さはあったのではないだろうか。

 ビビりながら輪っか部分に引っ掛けていた洗濯物を取り込んで、着替えたあと砦の朝礼に参加した。砦を収める王、「闘争」のリーダーと世間話をした。僕の身分はかなり高く、生活は保障されているが、砦の外には王に謁見など叶わないような下っ端の「闘争」の同志たちがいた。

 

 僕はそれほどでもないと思っていたが、僕とおなじくらいの身分の人の多くは外の同志を下の身分として軽く見ていた。

 

 僕はふだんは砦の外れ、時計を外した穴から出入りできるショールームで古物商をやっていて、たまにやってくるお客さんに雑貨を、本来の価値よりだいぶ上の値段で売りつける(催眠術や嘘を使うなどして)ことを職業としているが、自分では自分のことを探偵だと思っている。

 

 そんな感じの人間なので、僕は身分は高いけれど「千場闘争」のメンバーのなかではかなり異分子である。輪っかに住んでいるくらいだしね。輪っかだけではなく、基本的に砦のなかの人間は外が見える場所には住まないし、ベランダに出ようともしない。

 そんな人がなぜ「闘争」なんかに参加しているんだ、と思ったけど、どうやら僕自身は「闘争」が始まって後に砦のなかで生まれた世代らしい。

 

 自分が探偵である、というアイデンティティに説得力を持たせるために、僕は砦じゅうを歩き回って事件を探す。いろいろな場所に行き、いろいろな人と知り合い、たまには(砦のなかにいる人間はめったに行かない)砦の外にも行って、砦の外にひろがる広大な糞尿処理場(そしてそれと入り混じるように営業している外の人々のための飲食屋台)を見る。砦には巧妙に隠された巨大な陰謀があることにすこしずつ気づいていく。このへんは夢のなかでかなりボリュームがあったがほとんど覚えていないのでカットする。とにかく、なんやかんやあって陰謀の形がすこしずつ見えてきたのだ。

 

 そのうちに僕は日本語を話さない、そのため僕と同様砦の社会では浮いているとある女性と知り合い、彼女が謎を解く上でのキーマンだということがわかる。砦の一角にある「帝国ホテル」で待ち合わせをして、会う。話の終わりに、彼女は僕を指差して(僕は彼女の使う外国語がちょっとわかる)「臭いね」と言う。

 そのときに、生まれて初めて僕は自分が嗅覚に障害を負っていることに気づく。この砦で服を外に干しているのは自分だけで、砦から出て埋められる糞尿の匂いをさせているのは中にいる人のなかでは自分だけだということに思い至るのだ。

 

 そこで謎が解けて、砦をめぐる陰謀の全貌が明らかとなる。

 

 このときのすっきり感はやばかった。起きたときにはなにが謎でどんな解決だったのかは完全に忘れていたが、感覚は体に残っていた。いい夢だったし、世界観も良かった。また見たい。