最近ちょっと理由があって、いろいろな、自分で選んだわけでもないマンガの1巻ばかり読んでいる。
短距離走を題材にした作品。とくになにかしら努力や熱意を持っているわけではないのだけど、足が速かった主人公の少年が、自分の体をぼろぼろにしてまで「速く走る」ことに執着する転校生と出会い、走ることに真剣に向き合いはじめる、……真剣に向き合いはじめるのだけど、100mを速く走るだけの競技に真剣に向き合うというのは、とてもシビアで、悪魔の棲む生きかたである、というようなテーマを示したところで1巻は終わる。
才能とその限界、みたいな現実的なところに切り込もうという意思が見えてとても面白かった。
テーマの描かれかたは(自然な物語の流れに頼らず、テーマファーストで描かれるという点で)とても観念的で、それが独特の迫力を与えているんだけど、このやり方で最後までこの真剣なテーマを説得力を持って描くのはハードそうだ。絵やキャラクター、エピソードなど、そのほかの部分に特徴がある作品でもないので、この作品自体も100m走のようなソリッドな仕上がりになっていくのでしょう。
これは、笑……。
コンセプトが表紙を見た瞬間にわかってちょっと笑ったのだけど、中身は「コロコロコミック!」という感じのギャグが繰り出されるだけの作品で、基本的には大人の鑑賞に堪えるようなコマはひとつもない。
「マジック:ザ・ギャザリングを学べる!」みたいな要素もなく、ただ子供向けのギャグが繰り出され、でも子供ってマジックやるの? 誰向けの漫画なんだ、これ!? とちょっとびっくりしちゃったけど、でも、元ネタへのリスペクト、コロコロコミック的なフォーマットへのリスペクトが感じられて、これはこれで正しい着地点なのかもしれないと思った。
読みながら好きになってしまうかどうか超考えた。たしかにこの作品はとてもセンスが良く、テクニックがある。そのうえ、作者の「こういうことがしたい」の深さや重さ、この作品がこうでなければならない理由も感じる。
しかし上手いからこそ、本当にこれを好きになっていいのか? この作者の仕掛けた「こういうのがいいんでしょ?」に引っかかっているようでもあるんじゃないか? ……という疑念を抱いてしまう。
という葛藤はあったものの読み進め、出てきた、暑い部屋でペンキ塗りをするシーンがあまりにも直情的で(これは悪い意味で)キモく、センスとかテクニックでやりこめてやろう!というようなものではない、それ以前の創作衝動を感じたので、ちょっと信じて騙されてみたいと思った。「九龍ジェネリックロマンス」はとても面白い作品な気がする。
コマの流れ方が漫画ではなく映画。読んでいると、間が補完されて頭のなかでスクリーンで物語が展開されると思う。