家族として一緒に住んでいた叔母が教えてくれて、それではじまったものが僕のなかには数多くある。やっと中学生になり、背伸びして音楽を聴くことをおぼえたころ、「『ギルド』という曲の歌詞がめっちゃいいよ」といってBUMP OF CHICKENの「ユグドラシル」を貸してくれたのも、そのあと音楽番組の特番で「本能」という曲に興味を持った僕に「無罪モラトリアム」を貸してくれたのも叔母だった。
サカナクションの「シンシロ」を貸してくれたときは「魚」と言ったあと目の前でくしゃみをする真似をして、この謎の響きを持ったバンドの名前を覚えておく手助けをしてくれた。
そんなときにYouTubeで見つけて、そのころは僕にとっては師のような存在だった叔母に、「これ、ちょっと、いいなって思ったんだけど…」と恐る恐る聞いてみて、「わかる。いいよね」とお墨付きというか追認というか、そういうものをもらって、それで得意になって聞きはじめたのがフジファブリックというバンドだった。
すでにフロントマンの志村正彦は死んでいた。忌野清志郎やマイケル・ジャクソンが死んだ年だった。
フジファブリックは非常に草食系で、でも繊細ではなく大胆で、その大胆さで根っこにある繊細さを覆い隠そうかな?ってしているような曲がたくさんあるバンドで、それがとても趣味に合った。
いちばん聞いたのは「CHRONICLE」というアルバムだったと思う。いろいろなことがあって楽しかった高校時代をつらぬくサウンドトラックになった。「エイプリル」「クロニクル」を聞きながら、卒業するときのことを夢見たものだし、寮の仲間とした夜更かしでは必ず「Monster」や「Laid Back」が高まったタイミングでかけられた。気分が塞いでいて、ひとりでいる夜には「バウムクーヘン」や「同じ月」、「タイムマシン」を頭のなかで流した。
そのなかでも「Sugar!!」は忘れられない一曲だ。とても前向きで、走り出していこうっていう曲なのに、そういう自分を冷静に見つめている、体温の低い自分もまたそこにある、というような感じのアンビヴァレントな曲で、それがとても真に迫っていて、聞く人に勇気を与えてくれる。
そしてなんといっても「夜明けのBEAT」だよね。メロディもアレンジも歌唱も控えめだと思うのだけど、なんなのかわからない衝撃みたいなものがあった。このころの僕の「かっこいい」という感覚はこの曲にジャックされていたと思う。
フジファブリックについてはもっと語りたいことがあるのだけど……。フジファブリックのもっといいところ、はやく言いたい!