コンディショナーを買ったかもしれない

 

 最近とても悩んでいたのがシャンプーのことである。あったのが切れたのでちょっと前に新しいのを買ったのだけど、それ以来ずっと洗髪を失敗してばかりだ。

 なんというか、泡立ちがないというか、髪につけたらそのままそこに沈んで消えてしまって、それまで感じてた「洗えてる!」という感じがまったくしないのである。

 

 「これはそういうシャンプーなのかな」と素朴に受け入れてはいたのだけど、心のどこかに納得はいっていない部分もあった。「今日はなにかの間違いで、明日になればちゃんと洗えるかもしれない」と思いながら、毎日毎日洗髪を失敗し続けた。洗髪というような、日常的な生活のプロセスを失敗し続けるのは、なんというか、非常にストレスがたまる。

 

 そんなある日、ふと思った。間違ってコンディショナーを買ったのではないか。

 

 たしかに、シャンプーを買い替えた日はなんとなく気分が良かったので、いつもとは違う銘柄のものに挑戦してみようという気持ちでいた。ドラッグストアの、シャンプーが面陳されたコーナーにいて、色とりどりのパックを見ながら、最初の一瞥目ではびびっと来るものがなかったので、なんとなく歩きまわりながら探したのだ。……そこで、コンディショナーのコーナーに迷い込んでしまった可能性が、正直否定できない。

 

 リンスではないのは分かる。洗ったあと水では落ちにくい感じがしないので。しかし、コンディショナーなのか、それともそういうシャンプーなのかどうかは今となっては分からない。

 僕はコンディショナーをこれまで一回も髪に使ったことがなく*1、この「洗えてない」感じがコンディショナーの特性なのかどうか、判断する材料がない。

 しかも僕は伝統的にシャンプーはボトルを買わないスタイルの生活だ。ニトリとかでディスペンサーを買って、それに詰め替えパックを詰めて使う、というふうにしているので、風呂場に行ってラベルを見て確認する、という方法も使えない。

 

 あきらめてシャンプーをもう一回買えばいいじゃないか、そしてこれを機にコンディショナーを使って髪をきれいに保つ新しい生活習慣を身につけたらいいじゃん、とは思うのだけど、心のなかのもうひとつの声が邪魔をする。

 もし今つかってるあれがコンディショナーじゃなくて本当にシャンプーなのであれば、俺はシャンプーで髪を洗ったあとコンディショナーで髪を保湿しているんだ、と思いながらもういちどシャンプーで髪を洗う、まれに見る間抜けになってしまうぞ、と。

 おなじ間抜けならば、ここは突っ張ってコンディショナーで髪を洗い続けるほうがましじゃないか? と。*2

 

 ……結局、今夜も「シャンプーである可能性もなくはないもの」で髪を洗い、まったく手ごたえが感じられないままお風呂から上がった。

 

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 神様、ああ、……俺はコンディショナーを買ったかもしれない。

 

 最近はそれに加えて、左乳首の乳輪上にできものができていて、毎回体を洗うときにちょっと乱暴に触ってしまって毎回ちょっと後悔する。昨日もそうやって痛めたのに、なんで覚えておかなかったかな…、と。

 そのあともなんとなく乳首がふたつあるような自己意識*3になってしまって、なんとなく座りの悪い気分になる。

 

 風呂に入るということのなかで、毎日毎日失敗を2回する。気が滅入っちゃいますわ。

*1:化粧品会社が新たな需要を創出するために考えた嘘の液体だと思っている。

*2:僕の人生のこれまでの失敗(留年とか、靭帯断裂とか、友達を失ったりとか)はたいていこの声に従った結果起きたことである。

*3:もちろん、左乳輪上にふたつ、という意味であり、右の乳首も話に加えるなら、「三つあるような自己意識」とするのが正しい。