僕たちの故郷には
名前のついた風がひとつもない
どの家の窓にも立ち寄らず
一度吹きわたっていくだけの風たちだ
故郷の小学校には
完成した絵日記がひとつもない
鉢植えへ欠かさない毎朝の水やりも
最後には嘘の花が咲くだけの日々だった
小学校の校長は
まったく耳が聞こえなかった
門の外で明らかに待ち受けている
殺人者としての運命に
気づかぬまま僕たちを卒業させた
そして
僕たちのうちのだれも
まだそのことを許していない
僕たちの右手には
残っている指がひとつもない
僕たちの左手には
つけきれない指輪が
たくさん握られて光っている