「世界の未承認国家」「事実上独立した地域」について調べて、眠れない夜を明かした経験、というのはだれもが持っていることだと思う。僕にもあって、そのときに知って以来、なんとなく記憶に残っていたのがナゴルノ・カラバフ自治州という名前だった。
コーカサス地方――12時の方向から時計回りに、ロシア・黒海・アナトリア半島・アラビア半島・イラン・カスピ海とその向こうの中央アジアに囲まれている、文明の十字路のような地域。そこにあるアゼルバイジャンという国のなかに囲まれた、アルメニア人の暮らす土地である。
ちなみにアルメニア・イラン・トルコに囲まれている「AZER」というのはアゼルという国ではなく、アゼルバイジャンの飛び地である。
やっぱり、名前を聞いたことのある土地だったのでちょっと気になって、Wikipediaやその他いろいろなウェブ記事、ニュース、有識者っぽいかたのブログなどをちょっとした空き時間ごとに読んでいた。
もともとあった民族と土地をめぐる対立に、帝国主義という第三の力が加わり、……1世紀をかけてその圧力が去ったあとも、問題はさらに根深く、ほとんど解決不能のようになって残っている。
その後も武力衝突や民族浄化がしばしば生じ、人々が危険にさらされ続けているたくさんの地域のうちのひとつとなっていた。
今回のアゼルバイジャン、アルメニア、ナゴルノ=カラバフとロシア、トルコの関係を可能な限り簡単に示した図
— ᡩᡝᡵᡤᡳ ᠨᡝᠴᡳᠨ / Kubaani 🌺🍵🔺 (@Kubani_Kubanius) 2020年9月27日
(ここにさらにシリア、アメリカ、トルクメニスタン、ジョージア、ウクライナ、ルーマニアなどが絡んでくる) pic.twitter.com/4XixGXE1ji
バズっているツイートによると、周辺国との関係はこんな感じらしい。
もともとアルメニアとアゼルバイジャンのパワーバランスは、軍の練度や民族的意識みたいな理由からアルメニア優勢だったのだけど、最近はアゼルバイジャンの石油パワーでちょっと逆転してきていた、という感じだったらしく、その上アルメニアはいまのところ地震で原子力発電所*1が操業不能となっていて、人々の日常生活も苦しいタイミングだったという。
アルメニアにはロシアとの同盟があり、駐留軍もいるが、ロシアはなかなかアルメニアと駐留軍を支援しにくい。アルメニアとの最短ルートには間にジョージアがあり(この国はロシアと非常に仲が悪く、ちょっと前にNATO加盟をめぐってロシアと戦争になった)、イランを通して支援するしかないが、イランとの間にも微妙にどう動くのかわからない独裁国家トルクメニスタンがある。停戦が遅れると、アゼルバイジャンはイランとアルメニアの国境を支配下に置くかもしれない……、という感じらしい。
すでに民間人を含む死者が100名前後出ていると報道がされている。
これがナゴルノ・カラバフで実質的に独立しているアルツァフ共和国の国旗である。はじめに見たときは8bitでかっこいい国旗だなと思ったけど、よく見ると、アルメニアの国旗を引きちぎったようなデザインになっている。
そういうメッセージを掲げざるを得なかった過去の出来事に対しても、そしてこのメッセージが正当化している現在の出来事に対しても、それぞれに示唆的で、みていてかなりどきっとする気持ちになる国旗だとおもった。