クリームパン1個じゃ足りない

 

 8時くらいに目を覚ましたあとはずっと本を読んでいた。けっこう面白い本で、書かれている内容というよりは、書かれていないことのほうが気になって、読んでいるよりは並行してべつのことを考えている時間のほうが多い、……という感じの読書だった。いろいろ調べものをしたり、あるときは本を置いて部屋の中を歩きまわって*1、ひと段落ついたらまた、よしとりあえず書かれていることに興味を持ちなおして読んでみよう、となったりしているうちに気づいたら16時になっていた。

 

 時計を見ると、経っていた時間のぶんだけ飽きと疲れがやってくるものである。二日酔いのためあまり食欲は感じていなかったが、さすがになにかを食べよう、と思ってグーグルで地図を検索した。家の周りにある店はすべて把握しているのだが、いったん地図を見て、家の外には実在する空間があるということをしっかり把握しないとなんか家を出ようという気持ちにならないんですよね。毎朝出勤するときもやっている無意味ルーティンなのでそろそろ廃したい。

 

 コンビニでは最初は丼ものといったがっつりしたものを食べようと思って棚をながめてみた。牛丼もいいな、マーボー丼も食べたい、と思っているうちに、半日分の野菜が取れるというビビンバに目が行ったけど、そこで野菜を取らなきゃと常々思っていたことを思い出してサラダのコーナーへ行った。長いもの漬物があったので、もうこれ酒を飲んでもいいかもしれないな、とも思った。そこでウィスキーやその他蒸留酒の瓶がならんでいるコーナーに言ってみたんだけど、ここで買うよりちょっと足を伸ばした先のスーパーに行けば100円くらいお得な値段でおなじものが買える。しかし、スーパーに行くのであればすこし時間をずらして、お刺身が半額になりはじめる時間帯を狙いたい、……がお刺身を食べるとなるとやはりお酒は日本酒がいいのでは? と思っているうちになんとなくトイレに行きたくなったので、トイレに入ってから考えるか! と思ってぜんぶを棚上げにしてしまった。トイレから出たあとにはすべてを忘れてしまい、また丼コーナーを見ていた。

 

 最終的にはクリームパンを1個だけ買って帰ってきてしまい、「いや足りなくね~~? しょっぱいものも食べたいし!」と思った。なんとかもたせようと、コーヒーを入れて、優雅にちょっとずつ食べる感じにしようと思ったのだけど、結局コーヒーを一口飲んだあとはクリームパンをぱくぱくと食べきってしまった。

 

 そのあとも全然お腹が空いていたので、もう一度、今度は真剣に考えながら買い出しに行き、なんとか納得のいく食べ物を買いそろえることができた。

 

 僕は統合性に優れた人間ではなく、無意識から連想によって生じてくる考えに身を任せることを本能的に気持ちがいいと感じてしまい、気持ちがいいことをしてしまいたくなる。

 でも、気持ちがいいことをしたあとは、おなじことをふつうにやらなといけなくなって、おなじことを二度やるのは非常に手間がかかるんだよ、ということをクリームパンの教訓として引き出して、今後の参考にしていきたい。

*1:といっても狭い部屋なので3歩ほど歩けば横断したことになる。この3歩を何度も折り返しながら考え事をするのがけっこう好きである。