ひらがなを滅ぼしたい

 

 僕はとてもひらがなが嫌いなので、文章を書くときはなるべくひらがなを使って書くようにしている。早めにひらがなを使い果たしてしまおう、という作戦である。

 

 だからといって、やみくもにひらがなを使うのはあまり美しくないため、個人的なガイドラインをいくつか設けている。それをちょっと紹介してみたい。ほかにもきっといるであろう、ひらがなを憎んでいるひとの参考になれば幸甚に耐えない。

 

1.副詞はほぼひらがなで書く

 「殆ど」ではなく「ほとんど」、「尤も」ではなく「もっとも」と表記したほうがなんとなく頭がよく見える、という理由のよくわからない風潮はけっこう浸透していると思う。その延長線上で、副詞を使うときはなるべくひらがなを使いたいという気持ちがある。

 「全く」、「例えば」、「結構」とかであればひらがなで書いていてもけっこう違和感はないものだが、「何も」とか「意外に」とかだとあやしくなってくる(けどひらがなを使う)。本音を言えば「急に」「逆に」などもひらがなで書きたいんだけどここまでやってしまうとさすがに浮いてしまうことも多いので、慎重に、ばれないようにやっている。すべての副詞をひらがなにするのが今後のおおきな目標のひとつである。

 

2.形式的に使われる名詞もひらがなで書く

 「ハワイに行った時」とか「この辺」というような言い回しでつかう「時」「辺」は、もとの意味をほぼ失って文法機能として使われている感じがするので(このへんはちょっと国語文法を勉強して正確に理解したいではある)、そういうのはもうひらがなで書いてしまいたい。

 これを押しすすめて「さっきの人」「昨日の方」というときに使うような、「人」「方」もひらがなで書くことが多い。これも違和感があるひとにはとても違和感があると思うので申しわけない。

 

3.複合動詞の二番目の動詞の漢字もなるべくひらがなで書く

 「取り返す」「巻き込む」といった言葉も個人的にはちょっと気になる。まだひらがなで書く余地があるのではないか。「取りかえす」「巻きこむ」、……みなさんはどう思いますか? 最初は違和感があるし、そもそも変換でこの表記は1発目ではまず出てこないのでちょっとタイピングが面倒くさくなるが、でも、慣れたらこっちのほうがスタイリッシュでいいような気がしてきませんか。

 だって、「気が付く」とか「出て来る」とか、そういう書きかたはあまりしないわけじゃないですか。……ちょっとずつ、複合動詞の二番目の動詞の漢字をひらがなで書く動きは、これから加速していくと思う。

 

4.もっとたくさんのことをひらがなで書きたい

 「ゴシゴシ」とか「ピカピカ」などの擬音語、擬態語も個人的にはひらがなで書いている。ひらがなのほうがかわいいから。ほんとうは名詞以外はぜんぶひらがなで書きたくて、「使う」とか「置く」とか使用頻度の高いシンプルな動詞とかもすきを見てひらがなにしていっている。

 「ひらがな」を平仮名と書いているのを見かけると、ひらがなが蹂躙されているようでかなしくなってくる。だって、「カタカナ」を「Katakana」と書かないでしょう。

 

 ひらがな以外の表記にすることもできる語をあえてひらがなで書くことを、「ひらく」という一語であらわすことができる。たとえば、「苺」をひらくと「いちご」となる。このひらくって言葉も、なんとなく実態と即していて、しかも「ひらがな」の「ひら」とかかっていて、かわいいと思うのですきです。