好きな絵文字を紹介する

 

 僕と絵文字のあいだには、くっついたり離れたりする紆余曲折の長い歴史がある。幼児だったころ、親は自分のガラケーを遊び道具として僕に使わせてくれていて、親戚や父親にメールを送ったりして遊んでいた。ちゃんとした文章を送れるような日本語の力はなかったので、絵文字で埋め尽くしたメールを送る。多くのひとに、こういう時期もあったのではないでしょうか。父親はケータイ会社が違っていたので、一部の絵文字が送れないのをさびしく思ってたりもしていた。

 

 中学校以降になると、「陰キャは絵文字を使わない。絵文字を使えるのはイケてるグループだけ」みたいな絵文字自粛の雰囲気があったので、それに従い絵文字は使わなくなった。大学に入っても、しばらくは絵文字とは疎遠な関係が続いていたが、しだいに、おもになにかメッセージは返したいんだけど文は書きたくないときに、スタンプだとあからさますぎるのでその代わりのように使うようになった。

 

 最初は限定されたシチュエーションのときだけ使っていたが、たくさんの絵文字のなかから、そのときにぴったりのひとつを選び出すという作業がとても楽しくて、気づけば、絵文字を使う頻度はすこしずつ増えていった。絵文字のほうも、それに合わせて心を開いてくれるようだった。雪解け。

 

 最後の決め手になったのは、ツイッターでアニメオタク界隈をたくさんフォローするようになったこと。アニメオタクのある一部では、自分の推しキャラクターにたくさんある絵文字をのなかからひとつ当てはめて、それをそのキャラのシンボルマークのように扱うという文化がある。

 

 たとえば僕の推しキャラふたりの場合はこうなる。

 

🐈⭐

(後者は🍅をつかうときも多いが、個人的には公式のシンボルマークと一致するこちらのほうが好みである)

 

 この、自分の絵文字があるというのがうらやましすぎて、ちょっと昔、友達と飲んでいたときに「俺も俺を表すような絵文字が欲しいんだけど…」と切り出したところ、まあすぐには理解してもらえはしなかったけど、最終的にはみんな協力してくれた。

 

 そのときに決まったのがなんだったのかは忘れてしまったが、時を経て、それとはまたべつに、お気に入りの絵文字がたくさんできたので、それを紹介していきたい。

 

🥀

 これは僕の暗い性格を表した良い絵文字だと思ったのだが、マイ絵文字決めのときその場にいた、僕より暗く、しおれた花のイメージにぴったりと合っている友人が「俺これにするわ」と言ったので、まあそれはしかたない、と譲ることにした。なので僕は使用を控えています。

 

🕺

 リプライや、文面を盛り上げるときなどによく使うが、僕は実際には踊りが好きな人間ではないため、この絵文字を多用するのはなにか重大な自己欺瞞の表れなのかもしれない。

 

🤞

 これは「幸運を祈る」という意味の、英語圏で使われるハンドサインを表した絵文字である。高校1年の、クラスの雰囲気がまだ固まってないころ、僕は「ルロイ修道士事件」というこのサインが関係する痛々しい滑り事件を起こしてしまい、クラスメイトからの信頼を回復して会話に混ぜてもらえるようになるのにその年の11月までかかった。それまでの間僕が舐めた苦悩の冷たい酸といったら、筆舌に尽くしがたい。🥀

 いまだに思い出すと目の前が真っ白になる。この絵文字も見るだけで辛い。ぜひ、これは僕には送らないでいただきたい。

 

 こんど会ったときにでも、みなさんの好きな絵文字も教えてくださいね。