東大SF研の活動中止

 

 東大SF研が*1自らの団体としての活動を休止する、という内容を告知するツイートが流れてきた。

 

 このそっけない、なにもにおわせない文面にちょっとどきっとしたものを感じて、リンク先をのぞいてみた。サイトが作られた時代のある界隈にとってのスタンダードがそのまま保存されているような、文脈を感じるたたずまいのWebサイトがあり、「SF研究会 活動休止について」と題されたページが設けられている。

 これが滋味深い筆致をしていてちょっと読みいってしまった。

 

 

 活動休止に至るまでの経緯、そしてそのあとの備品などの動向や連絡先など、活動休止に当たってこのページを見るひとに伝えるべき必要事項が過不足なくわかりやすく書かれている。わかりやすいだけではなく、度を守った、だけども機微が伝わるような文章で、なんというかその温度感がとても良い。

 

積立て金が存在しますが、現在僕の管理にありませんし、アクセスすることも できません。 僕の手元にも100円玉10枚ほど部費がありますが...。 詳細については連絡してください。

(「部費について」)

いま僕が新勧をするなら、もっと一緒に楽しもうとする姿勢を出してあげたかっ たな、と思います。思うだけで、実際にできるかというと、よくわかりません が...。

(「サークル活動における反省点について」)

 ひとつの文化系サークルが陥った状態について、なんとなく察されるものがあり、何とも言えない気持ちになる。

 

 もっとも良かったのが、そこだけは自由に、でもある種の規律を失いはしないようなトーンで書こう、と決めたかのような「同人活動について」というセクションである。そのセクションだけ、筆者がサークル活動を通して印象に残ったことがランキング形式で書かれている。「印象に残った」というのが原文どおりの言い回しなのですが、この言いまわし良いですね。中立に述べようとしているようにも、皮肉のようにも、50:50くらいでとれるような感じ。

 

第2位 5時間一人で印刷

2015年の駒場祭用の同人誌を印刷していたときの出来事(?)です。誰も集合時間の午前10時に来なかったので一人でゲスプリンターで印刷作業を行っていましたが、僕はその時、人生がスケジュールされた死に向かって敷き詰められた退屈な時間ブロックの集合であることを確信しました。

(「同人活動について」)

(※)ゲスプリンターというのは印刷物を安く大量に印刷できるプリンターのこと。かわりにふつうのプリンターより扱いが面倒くさく、また作業も非常に退屈なので、ひとりでやるのはそうとう苦しい。僕は個人的にはひとりでやらされたらやらないで帰ると思う。

 

 活動休止に際して書かれた文章を面白がるのも悪趣味なような気がしますが、事実としてなんども読んでしまいました。東大SF研さんの活動休止を悼むとともに、頭の片隅に覚えておいて、過去の刊行物を手に取る機会があったら手に取ってみようと思います。おつかれさまでした。

*1:まったく知らないので名前からの推測ですが、おそらく東京大学にあるSFを研究するサークルだと思う。