三国の郷土資料館しか勝たん


 温泉郷、芦原を離れてつぎは三国と呼ばれる土地に向かう。九頭竜川という、飛天御剣流の技のような名前の川が日本海に注ぐ地点である。


f:id:kageboushi99m2:20200208155450j:plain

 なにをしていいかわからなかったので、とりあえず、海に突き出している突堤の先を目指すことにした。先端に着いたあとですらなにをしていいかわからないのであれば飛び込めばよい。その程度の人生だ。


f:id:kageboushi99m2:20200208155748j:plain

 さすがは冬の日本海。命の危険を感じるくらい波があらい。朝から降っていた小雨はあがっていたけれど、砕けた波が関係ないくらい空から降ってくる。

 しかし、突堤を挟んで河口側の水面はとても静かである。岩場に座り込んで釣りをしているひとせえいる。なんとなく、この突堤の存在意義が推察される。あとで分かったたことだけど、この突堤エッセル堤といい、この地域の歴史と深く関わっている重要な建造物だった。


f:id:kageboushi99m2:20200208160150j:plain

 全長の半分ほど進んだところで、「危険」と言われ、「その通りすぎる」と思って引き返した。とりあえずは死はお預けです。


f:id:kageboushi99m2:20200208160350j:plain

 そのあとは集落をたどって高台へ。なぜかトリックアートが町になんの伏線もなく置いてあったりして面白かった。

 1時間ほど町並みを散策していると、特徴的な建物があった。「龍翔館」という、飛天御剣流の技のような名前をしている郷土資料館だった。この形をしたエキゾチックな小学校が昔あって、それを建て直して資料館にしたらしい。設計者はお抱え外国人で、その名前は「エッセル」だという。


f:id:kageboushi99m2:20200208160927j:plain

 この郷土資料館がとても良くて感動した。いままで旅行のたびになんどか郷土資料館的な建物は入ってきたけど、これが暫定1位ではないだろうか。三国という土地の地形や植生、出土した石器などからはじまり、有機的に組み立てられた展示が続く。この三国という港町がどのように栄え、転機を迎えたのかがドラマチックに描かれている。

 元々は日本海と瀬戸内を結ぶ、留萌から大坂まで続く長い航路の一部として繁栄した三国湊は、九頭竜川からの土砂流入による港湾機能の劣化に悩まされた。オランダ人のエッセルさんを招聘して、港湾機能の維持のために堤防を作るものの、陸上交通の発展とともに海運業は衰退。しかたなく、産業を漁業にシフトする。

 越前ガニは町のいたるところで推されていたんだけど、それはどちらかというとしゃーなしだったんですね。


 しかし、そのエッセルさんがなんと騙し絵で有名なエッシャーさんの父親だということが最近判明し、それからはトリックアートの公募をしてみたりして新しい町おこしを試みているらしい。だからトリックアートがあったのか。


f:id:kageboushi99m2:20200208162026j:plain

 しかし展示は本当にすごかった。これがその一例なのですが、これ、すごくて、明治初年度の三国の町の中心部のそれぞれの家の人が、どんな名前で、どんな仕事をしていたのかが網羅されているパネルである。

 ほかにも、神輿の通っていたルートだったり、市内の各地区の産業とその変遷(このへんではらっきょがとれない、でもその隣の区域では作っていた、とか)がめちゃくちゃ詳しく書かれていた。すべてを理解してしまった。


 こういう郷土資料館がどうやってできているのか詳しくないのだけど、文化行政に携わるかたや郷土史家さんたちがものすごい仕事をしたのだと思う。これを見にわざわざ行く価値すらあるぜ。みんなもおいでね! 三国!