キンモクセイ

 

 キンモクセイが香ってくる季節になりましたね。ところで僕はキンモクセイの香りを知らない。もしかしたら香りを感じたことはあるのかもしれないけれど、まだいまだにそれをキンモクセイだと同定できていない。もし僕といっしょにいるときにキンモクセイの香りがしたら教えていただけると嬉しいです。

 

 キンモクセイという僕の大好きなバンドがある。「そんなマニアックなバンド知らない」と反射的に思うかたも多いかもしれないが、それは同定できていないだけな可能性がけっこうある。僕もキンモクセイを好きになるまえからこの曲を知っていて、たまに思い出して口ずさむ程度には好きだった。

 

 思い出しいただけただろうか? テレビアニメ「あたしンち」のオープニングテーマである。ほかにも「二人のアカボシ」という、有線を中心にはやった最大のヒット曲があり、この曲で紅白歌合戦にも出場した。キンモクセイといえばこちらのほうを思い浮かべるひとのほうが多いような気もする。ちなみに僕は「二人のアカボシ」はキンモクセイを好きになるまで聞いたことがなかった。

 

 基本的にはどことなく懐かしさを感じるような和風のポップミュージックを、しかも質のいいポップミュージックを量産する、信頼のおけるバンドである。慣れ親しんだよきもののダサさ、みたいなものをひとつの美学にしていて、それを貫いている。

 それに、そのポップさに押されて最初は聞き逃してしまうんだけど、曲をちゃんと聞いてみるとそれぞれのパートがちょっと変わった、工夫のされたことをやっていて、そこに注目し始めると聞き飽きるということがない。

 

 2008年に活動を休止、そのあとは完全に忘れられた、テレビの懐メロ番組のなかだけの存在になっていた。僕が彼らを聞きはじめたのはたしか2014年ごろで、「キンモクセイ バンド」と検索しても2chのスレ「スレタイキンモクセイってバンドwwwww」「本文:活動再開してほしい」というようなのばかりが見つかるだけで、それに強くうなずいたりしていた。

 

 そのキンモクセイがついに本格的に活動を再開した。サブスクには彼らの過去のアルバムが放流され、最新シングルがリリースされ、またニューアルバムの発売も決まった。すみません、こんなに僕だけが幸せで。

 

 生きていてよかったな~。