夢の検証

 

 僕は眠るのが大好きで、生まれてからずっと、起きているか寝ているか選べるときは可能な限りつねに眠っているようにしてきた。一般的に、生き物は起きているより寝ているときのほうが様々な面で好ましい、良いとされている。(一例として、ドラクエ4で戦うエスタークは戦闘開始後しばらくは眠っていて、戦っているとそのうち起きるが、寝ているときのほうが強い)

 

 眠りにもいろいろなシチュエーションがあって、どのような眠りもそれぞれの良さがあり、重い二日酔いの状態で朝から昼にかけて寝るときの眠りにも独特の良さがある。眠りが浅いことが影響しているのか、あるいはシンプルにアルコールの離脱作用で幻覚を見ているだけなのかもしれないが、感覚に激しく訴えかける夢を見ることができる。

 

 僕はどこか知らない街の夜の路上を歩いていて、飲み友達のおっちゃん3名に遭遇した。「飲みに行こう」と言われて、上野の飲み屋街に行った。この時点で夢だということには気づいていたので、せっかくなので高い日本酒とかを楽しもうと思った。

 

 お店を出て、ひとりでびっくりハウスに行った。びっくりハウスとは何か?と思うひともいるかもしれないが、びっくりハウスというしかない場所だったとご理解いただきたい。あの施設にぴったりとあてはまる語彙はこちら側の世界にはない。いちばん最後の部屋(尖塔の真下にあった)で布団にくるまると浮遊力が発生し、空に浮かび上がった。僕の上昇にあわせて天井が開き、夜の街の空に放り出されたのだけど、ふわふわと浮かんでいるのは怖かったのですぐに戻った。

 

 部屋に戻ったらやることがなくなったので、布団にくるまって眠った。先述したように、可能な限り眠れ、というのが僕の厳守するルールである。

 

 それで布団のなかで目をつぶると、体が回転しているような感覚と、カーテンが引かれるしゃーっという音が聞こえてきた。僕の夢には処理できる感覚データの上限がある、というのはこれまでの経験からわかっていた。たとえば、夢のなかで、触覚情報を得ようとして周りのものに触れると、触感は感じとれるがかわりに音が聞こえなくなる。いまは目をつぶったので、音と身体感覚が同時に得られているのだろう、と考えた。

 

 夢のなかで回転や移動の感覚を感じているとき、現実の自分は寝返りをうっているのではないか? という長年抱いていた疑問があって、そのときそれを検証したい気分になった。ひょっとしたらいま聞こえているカーテンの音は、現実の世界で寝返りに引っかかってカーテンが実際に立てている音なのでは? と考えるとつじつまが合うような気がした。というわけで、目を覚まして現実に戻って、自分の身のまわりの状態を確認した。

 

 結果から言えば、寝返りをうった形跡はなく、カーテンも乱れていなかった。夢のなかでの身体感覚と現実での寝返りの有無には関係がない、という方向を支持する観察結果がひとつ得られたことになる。

 

 僕は最近ブログ脳になっていて(その前はTwitter脳だった)、日常で起こったことすべてをこれは記事になるんじゃないか、と思ってしまう。そのときも頭のなかで草稿を書きながらパソコンがある部屋に行った。そしたら家の形が完全に変わっていた。

 

 最近僕の実家では改造工事があり、電気系統が入れ替わったり部屋が増えたりしていたので、これもその一環か、と一瞬納得しかけたんだけどその域を超えていたので非常に驚いた。そしたら下の階からめっちゃやばいものが上がってきて、死ぬほどビビりながら本当の起床をした。

 

 夢から目覚めたと思ったらまだ夢だった、という経験はこれまでにもけっこうあって、それだけならべつにいいんだけど、問題なのは、目覚めたあと、これはまだ夢だと気づいた瞬間になぜか毎回とても恐ろしいことが起こるということである。毎回怖いので本当にびっくりする。

 

 今回の場合は夢のなかで書いたブログの草稿を起きていてもまだ覚えていたので、すくなくともびっくり損ではなかったので良かった。

 

 最後に、この記事を書きながらも、現実だと思っていた夢のなかでこれが夢だと気づいたあとに必ず起こる恐ろしい出来事について、やっぱり考えてしまう。いま僕がいてこの文章を書いているのは現実だという確信があるが、もしこれが夢だと気づいてしまった場合にも、おなじような恐ろしい出来事が起きるような気がする。その場合は、(現実へ目覚めることはこれ以上できないので)たぶんびっくりでは済まず、やばいものに襲われて、襲われたまま現実を、長いあいだ、最期まで過ごすんだと思う。