日本で一番長い川面にかかった橋を渡った強者

 

前回までのあらすじ

タコパをしていたら銚子に行くことになった。銚子を満喫しているうちに旅モチベが上がり、銚子に宿をとってしまう。特急列車で東京へ戻る友人を見送って、僕ひとりだけ旅行をしばらく続けることにしたのだった。

 ちなみに銚子で泊まった場所は、宿の名前で検索すると「幽霊」が検索候補に入ってくるという場所だった。

 たしかに、リーズナブルな宿ということもあって「幽霊なんて出るわけないだろう」というような内装や雰囲気ではなかったが、とくに恐ろしいものとの出会いはなかった。夜、自分の人生の失敗した出来事をつぎつぎと思い出してバッドな気分になっちゃったくらいである。


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 朝は銚子大橋を渡った。近くにあった情報ボードによると、川にかけてある橋のなかでは日本で一番長いのだという。わくわくして「日本で一番長い川面にかかった橋を渡る」という実績をアンロックした。人生は一度きり、アンロックできそうな実績はアンロックしておいたほうがいいですよね。


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 そのあとはバス停をたどり歩きながら、1時間に一度通るバスをタイミングを合わせて拾う。田舎の路線バスはけして安くないし、本数もすくないのだけど、とんでもない運転技能を間近で見ることができるアトラクションとして楽しむことができる。

 このバスも、緩衝帯ゼロ、道幅はギリギリ2台が行き違えるくらい、脇道もなしという恐ろしい区間を、めちゃめちゃなテクニックで路側寄せして後続車を通したり、きれきれの判断力で前方の遅い車を抜いたりして進んでいて脱帽だった。


 写真は神栖市一のインスタ映えスポットだというところ。風車と傾斜のかかった堤防、海岸道路というロケーションはたしかに迫力があった。つぎのバスを拾えないとここに夕方までいることになってしまうので、長居はせず、TikTokを1本だけ撮ってから帰路についた。


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 バスを降りて鹿島神宮へおまいり。とくに信仰心はないつもりだが、有名な神社や寺に参るのも実績解除のつもりでやっている。

 信仰心がなくとも神社や寺はだいたいパワースポットにあるので、参るだけでエネルギーがもらえる。実際、旅先で神社や寺を見つけたら小さなものでも寄り道でも欠かさず参る習慣をつけてから、人生のあらゆることが好転していっている。失敗とかも最近したことないし、ラッキーが降りかかってくること数あまただ。旅先での習慣として、おすすめです。


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 鹿島神宮駅には鹿島アントラーズの歴代ユニフォームが飾ってあった。ピッチで観るときは憎たらしい敵だが、それ以外で見かけるとやっぱりひとりのJリーグファンとして親近感がわく。


 さて、ここからは電車に乗るわけだけど、つぎの目的地はどこにしようかな…。


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 まあこういうことになっていくよね。

錦糸町〜犬吠埼〜外川

 

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 友人とたこ焼きパーティーをした。明日は休日。たこ焼きを焼きながら、「あしたこのメンバーでなにか面白いことしたいね」「そうだね」と、とりとめもなくボウリングや水タバコやバーベキューや公園の話をしていた。

 

 高校の同級生どうしで、べつに趣味がぴったりとかみ合っているわけでもない集まりである。こういったとりとめもないレジャーの相談が、実行に移されることはほとんどない。月を見て「月に行きたいね」って言ってるみたいな、その場の話題にしているってだけの感じ。

 

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 しかし翌日、我々は犬吠埼灯台の真下にいた。ひとり脱落してしまったけど、志を同じくする仲間の大半と、空想的だった話をなんとかみんなが乗り気になれるプランに着地させることに成功しちゃったのです。

 海は白波を上げていて、灯台からの眺めは素敵だったが、灯台はもちろん観光客のための構造はしていないので、上り下りは大変でした。どれくらい大変かというと、べつに無理して上まで行くのをすすめるほどではないくらい大変。狭い螺旋階段一本なので、体力的にきついというよりは、周囲の人に気を使って精神的に疲れる。

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 海はこんな感じ。波がすごい! ふざけて「サーフィンしたい! 俺サーフィンじつはできるんだよ!」みたいなことを言っちゃったけど、ここでサーフィンしたら岩にぶつかって体バラバラになるだろうな…。

 

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 財政難の銚子電鉄は前駅の命名権を他人に売り渡している。銚子駅の名前はかなりソウルフルだ。肝心の犬吠駅の名前は沖縄ツーリストという僕の地元の企業が権利を取得していて、思わぬつながりにちょっとびっくりした。

 その縁あってか、駅舎内では首里城の復興を支援するポストカードが売られたりしていた。うれしい。ありがとうの連鎖だ。

 

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 ご飯は終点の外川で食べた。お刺身と何か1品がついてくる定食なのだが、煮物を選ぶと家族3人分くらいの魚の煮物が出てきていかつい。僕が食べたのは画像右の刺身+魚しゃぶ定食だったがこれも食としてなにか重複があるような気がする。

 最終的にはしゃぶしゃぶのつゆはご飯にかけてお魚茶漬けになるのだけど、これも非常にすばらしい。

 

 とても豪勢で、一生忘れないであろう食事になった。この辺きたら確実にまた行くでしょう。

 

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 じつは僕も漁港の町生まれなので、こういう景色にちょっとした親近感を感じる。

 ご飯を食べていたら、お店の玄関のまえを猫がなかを覗きながら横切っていった。港で生まれた猫はしあわせだ。

 

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 そのあとはとくに写真は撮らなかったが、温泉に行ってゆっくりしたりなどしていた。ゆっくりしているうちに東京へ戻る終電の時間になっていた。

V6はハッピーエンドだった

 

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 V6のラストライブを見た。ハッピーエンドでとても良かった。

 

 ……ラストライブだからいままで愛唱してきたシングル曲を中心に、総集編みたいな感じでライブをやるのかな、となんとなく思っていたがそうではなかった。

 直前に出した(しかも一曲もシングルカットしてない)アルバムの収録曲を力を入れてやりつつ、トニセンvsカミセンの対バンみたいな構図を作って過去のめずらしめの曲をカバー。「愛なんだ」や「HONEY BEAT」みたいな有名曲は短くカットしてファンサのときに、「PINEAPPLE」のような最近の力作はステージ演出も作り込んで、……というふうにかなりメリハリの利いたパフォーマンスをやっていた。

 

 個人的には「MUSIC FOR THE PEOPLE」「MADE IN JAPAN」「BEAT YOUR HEART」「TAKE ME HIGHER」という、ユーロビートが特徴的な最初の4枚のシングルを連続してやったパートにぐっときました。

 

 あとびっくりしたのが「家族」という曲。揖保乃糸みたいなカーテンが上から降りてきて、それで仕切られた四角のなかにメンバーが入って、天井から吊り下げられたひょろひょろの電球を手に支えながら……、というけっこう不気味な演出で「オレタチ…、カゾク…、オタガイ…、マモル…」というふうに歌っていて、なにこれ那田蜘蛛山編で出てきた疑似家族作ってる鬼のイメージソング?って思った。

 

 あとは「PINEAPPLE」のフルパフォーマンスも見れたので素直に崩れ落ちました。この曲に関しては「PINEAPPLEの好きなところ - タイドプールにとり残されて」という感じでそれのことだけ語った回があるほどには好きで、最後のライブで見れたのがとてもうれしい。

 

 MCはいつも通りただしゃべってるだけだったけど、それでも三宅が帽子かぶってた話とか、井ノ原が26年やっててはじめて「MUSIC FOR THE PEOPLE」の振り間違えた話とか、岡田が26年目ずっとやりたかったいたずらを「MADE IN JAPAN」のときに長野に仕掛けた話とかサイコーでしたね。

 6人からのメッセージの部分は、やっぱり言えることと言えないことがあって、まあ結局ふつうのことを言うしかないんだけど、そのなかでそれぞれの、「このひとはこうだよなあ…」と最後まで個性に感動できる形のスピーチがきけたのは良かった。岡田がもうとくになんも考えずに話し始めて、案の定途中着地点を見失うんだけど、結局岡田が真剣な顔してたら最終的にはさまになるの良かった。

 

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 じつはいまアマゾンプライムで昔のV6のライブがザクザク見れます。漫画は完結してから読む派のひと、いまこそV6おすすめですよ。

人生に対する無条件で肯定的な関心~イーユン・リー『千年の祈り』~

 

 イーユン・リーは北京で生まれ、天安門事件を体験、その後アメリカ合衆国に移住して市民権を取得した英語で創作をする小説家である。「共同体」そのものを語り手に据えた実験的な体裁を持つ短編「不滅」*1でデビューし、そのまま現代アメリカのもっとも重要な作家のひとりに数えられるまでになった。

 

 ……という経歴やステータスをもつ作家なので、だいたい面白いんだろうとは思っていて、「面白さが保障されているっぽいし、じゃあとくにつぎ読みたいものがなくなったときに適当に読んで流すか笑」みたいなスタンスでずっといた。それで最近読んだんだけど、ぜんぜん流せるような密度じゃなかった。レベルが違う。

 

 一日に三回、林ばあさんは唐じいさんにインシュリン注射を打つ。そのときだけ、唐じいさんの体に残った生命力が、ちょっぴり顔をのぞかせる。腕に針を入れるとき、筋肉がぴくっとたじろぐのだ。針を抜くときわずかに血が出ることがあるのだが、林ばあさんはそれを脱脂綿ではなく自分の指先でぬぐいとり、彼の血が体にしみこんでいく不思議な感覚にうっとりする。(「あまりもの」)

 一発目の「あまりもの」の時点で端的に神。ひとりの抑圧された女性の後半生をダイジェストのように描く物語なのだけど、その女性の恋、……というか他人とのロマンチックであたたかな関わりかたが物語の中心に置かれていて、浅い言い回しになってしまうがかなり「深イイ」話になっている。

 飛び道具に頼らずに丁寧に書ける作家なのだけど、そのうえで物語に組み込む要素の数も多く、けど乱雑にならず、読みやすく、まとまっている。

 

 ほかの収録作を読んでいってもすごい。基本的にはヒューマニズムあふれる、長編小説の一部みたいなドラマが描かれていることが多いのだけど、構造を入れたり、まさかの展開でひっくり返したり、作中の小さな要素と大きなテーマを対応させたり、……などなど技も多彩でどれも質が高い。

 自分をとりまく運命に打ちのめされている人物が描かれ、殺人や欺瞞、人間の美しくはない部分がふんだんに描かれるけれど、作者はそんな人生に対しても、無条件で、肯定的な関心を抱いている。

 そのうえ、自身のエスニシティを作品に反映させるしかたも習得しているし、世代間の対立やジェンダーの問題といった文脈も消化していて、しかも中国の古典や現代アメリカの作家に対する参照もあり、文学の大きな流れの中での立ち位置も確保している。

 

〈もちろん、よくない関係にも理由があるんです――わたしは娘のために、いいかげんな祈りを千年やったにちがいない〉(「千年の祈り」)

 色々な切り口で褒めることができるすごい短編作品ばっかりだけど、ただすごいだけじゃなくふつうに適当に読んでても面白い。

 個人的にいちばん好きだったのは、最後に収録されている表題作。ロケット工学者である中国人の父が、離婚した娘を訪ねてアメリカに行くと、そこでイラン人の高齢女性と話仲間になる。おたがい簡単な英語しかしゃべれないので、自分の人生を振り返った重い話をするときは、相手が理解できない自分の国の言葉になる。……というギミックをまずひとつ使った話で、誰かに向けて語ること、誰に向けても語ることのできなかったこと、語ったときに語り落としたこと、語られていないけど伝わったかもしれないこと、……というテーマがきれいに描かれている。

 

 引用した部分からあとはもうずっと泣いてました*2。読むか読まないかでいったら、絶対読んだほうがいいですよこの本。おすすめです。

*1:『千年の祈り』に収録されている。

*2:話すっていうのはいい加減に祈るってことなんだよな……(2022年3月追記)。

ライフハック

 

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 じつは8月くらいから仕事をやめていて毎日ひまだった。

 

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 はじめのころは時間を有意義に使えていたのでけっこう楽しかったが、だんだん生活リズムは崩れ、なにかをしようと思うとそれがなんであれ面倒に感じるようになってきた。

 人生でいちどはやってみたいと思っていた「寝る時間を徐々に後ろにずらしていって一周させる」を実現できたのはうれしかったが、その時期の体はとてもしんどかった*1。寝る時間はまわして遊ぶおもちゃじゃないので、固定したほうがいい。

 

 もちろんお酒の毒も蓄積していき、肝臓は辞める寸前である。

 

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 というわけで、職を探すことにした。なんとか拾ってくれるところがあり*2、ひまひま期間も残すところわずかとなった。職種としてはだいたい前とおなじであり、面接で話を聞いた感じだと僕でもまあまあ戦力としてやっていけそう、とのことだった*3

 

 ピリオドが見えてくると、毎日の暮らしにも張り合いが出てくる。とりあえず、今日は数週間ぶりの休肝日にして、これをstay sober entry*4としたい。

 

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 ……就職した、とはいえ時給でやる仕事だし、しかも「週三日がいいです!」とワークライフバランスを通常とは逆側に崩したような労働条件のお願いもしている。一応僕の試算ではこれで生活を維持しつつ多少の積み立てorお酒が飲めるのでぜんぜんOKのはずだが、同時に、Twitterで流れてきた「40代まで遊んでそのあと死ぬまで低賃金で働く逆FIRE」という文字列を見て「これ俺じゃね?」とちょっと不安になりもした。

 

 まあ、アリとキリギリスの童話をふつうにキリギリスに感情移入して聞いていた子供だったので、人生の歩みかたとしてこうなるのはしかたないのかもしれない。晩年大変なことになって吠え面をかくのが楽しみだ。

 

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 ちなみに、仕事をやめたことはとくにだれにも言わずにいた。情けなかったから、とくに言いふらすことでもないから、というのが理由だがけっこうこれが思わぬ形で良かった。

 嘘ついて「ぜんぜん仕事してますよ」というふりを続けていると、なんか自分でも仕事ふつうに続けてるような気持ちになってくるのだが、実際は朝起きてもなにもやらないでいいし、明日も明後日もずーっとなにもしなくていい。この気持ちと現実のギャップがかなり開放感があって気持ちいいのである。「今日木曜の気分でいたら金曜だった」とか「明日祝日だったことに気づかなかった」みたいな多幸感がある。

 

 それに仕事してる感じを出しておけば、「不安を感じている雰囲気を出さないといけない」「仕事をしているひとをねぎらわないといけない」「なにか面白いことをいわないといけない」といった無職にかかる社会的役割のプレッシャーから自由になれるのも大きい。

 

 もし、なにかがあって仕事をやめるときは、ふつうに働いてますけど?みたいなていで生活するのかなり楽なのでおすすめです。ライフハック

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*1:とくに16時ごろに寝て1時くらいに起きる時期がいちばん寝苦しく、起きていても外真っ暗だし全身はだるいしで、大変なチャレンジだった。

*2:ありがたいことだ。

*3:数か月後弱音を吐いているかもしれないが。

*4:ステイ・ソバー・エントリー - タイドプールにとり残されて

熱いハートのキュアおでん~柴田葵『母の愛、僕のラブ』~

 

金木犀 僕はおまえになりたいがなりたい心のまま歳をとる

母の愛、僕のラブ

母の愛、僕のラブ

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 柴田葵さんというかたの書いた『母の愛、僕のラブ』という歌集を読んでいた。とてもとても面白かった。

 

プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ

 このプリキュアとおでんの歌はこの歌集をレペゼンする作品のようで、どこかでこれだけ切り離された状態で見たことがあった。そのときは、なんか適当というか、人を食ったような感じが作風なのかなと思った。タイトルも『母の愛、僕のラブ』ってちょっとちょけ気味だし。

 

 読んでみるとちょっと違う。たしかに読むがわの調子を狂わせるような言葉遣いはいっぱいあるんだけど、その変な手法でひとの目を珍しがらせるだけを目的としているという感じではない。

 

 キュアおでんの歌も、はいっている「ぺらぺらなおでん」という連作の一部としてみると、ただ言葉のうえでふざけてる歌じゃなくて、けっこう強い、「生活のなかで、自分にできることはささいなことかもしれないけれど、熱いハートとモチベーションをもってやっていくぞ!」という決意が感じられる、意味の交わるところであり深みのある作品になっているのである。

 嘘のように聞こえるかもしれないけど本当なのでちょっと読んでみてください。実際僕、この連作を読んでもういちどキュアおでんの歌を読みかえしたら、アツくなってちょっと泣いてしまった。

 

傘なんて意味をなさない霧雨に全身とりわけ眼鏡が濡れる

捨てられたバケツなみなみ雨を飲みわたしはそれを見て満たされる

大空のような男に「ついてきて欲しい」と言われ 私が女

八月のマツモトキヨシは冷えていて簡易検査の箱はなおさら

包まれた焼き鳥たちを胸もとに抱えて愛は醤油のにおい

欠席をします に丸をつけるとき始めと終わりがうつくしく合う

 連作として作りが綺麗なだけではなく、一首一首も面白い。とりあげる物事に目新しさがあったり、「そういう落ちになるんだ!」みたいなひねりがあったりと、一個読むごとに新鮮に感動できる。読んでいるとつぎの短歌が出てくるのが楽しみである。

 

公園の蛸すべりだいはすり減って蛸を脱したすべらかなもの

 一首としていちばん好きなのはこれかも。「すべりだいがすり減る」というところに着目した作品がこの世に生まれたのが単純に助かるし、すり減ったあとのものを「タコを脱したすべらかなもの」という、具体的な形容ではない、でもなんか「聖なる」感を感じさせる言葉を使って表現したのもきいている。「蛸すべりだい」という謎だけど親しみやすいワードがあるのもアクセントがきいている。

 

 とても面白いので迷ったら読むのがおすすめです。

ディレイで沖縄そばの日

 

ハイライト

今回のハイライト:

「ピンクのちっちゃい麺があったよ」と子供が紅しょうがのことを表現していた。

 今回はハイライトを用意したので忙しいひとはここだけ読んでもらえれば大丈夫です。

 

本題

 10月17日は沖縄そばの日である。

 

 僕はそれをマジック:ザ・ギャザリングフレーバーテキストを流しているbotを見て知った。このツイートがとても面白かった*1ので、友達にリンクをラインしたのだけど、そしたら「面白いな。じゃあ沖縄そば食べにいかない?」と返信が来た。

 

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 正直めんどくさくてどこかへ出かけたいような気持ではなく、いったん既読スルーをしたが、じつはこのときちょっとした経緯でこの友人が使ってるスーパーのポイントカードをずっと僕が持っていて、近いうちに返さないといけなかった。

 

 MTGフレイバーbotの文脈外れなお告げ、持ち主のもとに帰るべきポイントカード。ふたつの偶然に後押しされ、沖縄そばを食べに行くか、という気持ちになった。

 

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 ……と思ったらお店開いてませんでした! しかたなく友人とケバブサンドを食べ(日本屈指のケバブと謳っていて実際おいしかった)、そのあと居酒屋で軽く飲んだ(1時間、2時間の飲み放題セットがリーズナブルで、しかも店主が適当にあてを作ってくれるというシステムだった。すばらしかった)。

 「このまえここで見た演劇がつまらなかった」「この商店街、全体的に暗いな」などとこの日の友人は周囲にあるものや目に映ったものの文句ばかり言っていて、「社会がこの人を変えてしまったんだな」とちょっと思った。

 

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 で、今日そのおなじ沖縄そばのお店にいってきたってことよ。ディレイで沖縄そばの日! ってなあもんですね。僕は沖縄をrepresentしている身なので若干沖縄そばには高い水準の要求をしてしまうのだが(詳しくは深刻な沖縄そばロス - タイドプールにとり残されて)、これはそのハードルを越えてくる良い沖縄そばだった。

 

 友人と食べていたら、となりの席にいた子どもが紅しょうがを見つけて、「ピンクのちっちゃい麺があったよ」と親に報告していた。いい言語表現だなと思った。言葉の力って、すごい、と思った。

 

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 実際は僕はこれくらい辛くして食べるのが好きです。ひとそれぞれですね。

*1:一応ちゃんと本当に沖縄そばの日らしい。